テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
第4話 鉄格子の向こうの沈黙
夜。
廊下は静まり返り、昼の騒ぎが嘘のように落ち着いていた。
けれど omr の胸には、まだ昼間の光景が焼き付いて離れなかった。
血を流しながら、自分をかばった wki の姿。
「なんで……あいつが……」
自問しても答えは出ない。
鍵束を鳴らし、omr は独房の前に立つ。
中では wki が壁にもたれ、まだ肩を押さえていた。
血は止まっているようだが、表情はどこか疲れている。
「……具合はどうだ。」
声をかけると、wki は薄く笑った。
「大したことねぇよ。看守のお前の方が顔色悪いじゃねぇか。」
挑発とも冗談ともつかない言葉。
だが、そこにいつもの棘はなかった。
沈黙のあと、omr は思わず口を開いた。
「……なんであんな真似をした。」
wki は目を伏せ、肩をすくめた。
「理由なんかねぇよ。ただ……目の前でお前が殴られるの、見たくなかっただけだ。」
「囚人がお前の代わりに殴られるなんて、笑える話だろ。」
そう言って wki は笑った。だがその声はかすかに震えていた。
鉄格子を挟んで、二人はしばらく黙った。
夜の風が窓を鳴らし、遠くで犬の声が聞こえる。
やがて omr が低く呟く。
「……お前は、ただの囚人じゃない。」
wki が顔を上げ、目を細める。
その瞳の奥に、挑発でも冷笑でもない、ほんの一瞬の素顔が覗いた。
「……だったら、俺を名前で呼んでみろよ。」
omr の心臓が、不意に強く跳ねた。