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数日後、気づけば俺は現ハートの海賊団クルーであるシャチ、ペンギン、ベポの3人とも仲良くなっていた。あ、でも今はまだ海賊じゃねえんだっけ? ……まあなんでもいいか。将来的に海賊になることは決まっているんだし。
それはとそうと、シャチとペンギンはかなり俺を可愛がってくれる。お兄ちゃんって感じ。あとベポはふわふわで可愛い。普通熊と触れ合うことなんて出来ねえからな……。仲良くなってベポの腹でお昼寝までさせてもらっちゃった……。
エドモンドとの稽古も順調に進んで、最近じゃ六式の中の鉄塊、指銃、紙絵が出来るようになった。あと3つだ。呑み込みが早いってエドモンドに褒められたんだよな。照れるぜ!
そんなある日のこと。いつもの様に稽古をしていたのだが、今日はエドモンドがいない。なんか旧友に会いに行くとかなんとか言ってた。帰るのは夕方過ぎになるとか。なので、今は俺1人しかいない。俺は庭の隅っこに座って休憩していた。そのうち、ごろんと芝生の上に寝転がって空を眺める。青い空が眩しい。風が気持ちいい。
うとうとと微睡んでいると、ふっと影がかかる。
「んぉ…?」
「よう、ジェディ」
「…ロー? どうした?今日は特に約束してねぇけど……俺に何か用か?」
「今日の正午にはここを発つから言いに来た」
「えっ」
俺は思い切り起き上がる。い、いきなりすぎないか!? もう2日くらいいるって言ってなかったか!?
……あれ? なんだろうこの喪失感。まだ会ってから1週間も経ってないはずなんだけどな……? 俺、結構こいつらと過ごすの楽しんでたんだな。
それにしても急すぎて頭が追いつかない。そんな俺の様子を察してか否か、ローが口を開く。
「何しょぼくれてやがる。今生の別れってわけでもねぇのに」
「そ、それはわかってるけどさ……」
そう言うと、ローは小さくため息をついた。
そしてしゃがんで座っている俺と目線を合わせると、ぽんと頭に手を乗せてきた。ローはそのまま何も言わずに頭を撫でてくる。その手つきはとても優しくて、なんだかくすぐったい。
「ロー?」
俺が名前を呼ぶと、ローはふっと微笑む。するとローが小さな紙袋を俺に手渡した。なんだこれ……? もしかしなくてもプレゼント……?
紙袋を手に持ったまま、俺は数秒固まる。
「…なにこれ?」
「開けてみろ」
言われた通りに中を開けると、そこにはブレスレットが入っていた。銀色に輝く細身のチェーンに、水色の小さな石がついている。シンプルだがとても綺麗だ。
思わず見惚れていると、ローがそのブレスレットを手に取って俺の腕につけた。
「えっ、えっ、なにこれ、プレゼントってことで合ってる?」
「好きに解釈しろ」
そう言われ、俺の口角が自然と上がっていく。えへへ、とだらしない笑い声まで漏れてしまった。俺はブレスレットを陽の光にかざしてみた。きらりと輝くそれが美しくて目を離せない。
「……ふへへ」
まただらしない笑みが零れる俺の腕を、ローが掴んだ。
「どうし――」
どうしたんだ、と言い切る前に、ちゅっと音を立てて手の平にキスされた。突然の出来事に思考回路が完全に停止する。
ローの顔を見ると、彼は真剣な眼差しで俺を見つめていた。どくん、と心臓が大きく脈打つ。ローは俺の手をぎゅっと握ると、そのまま自分の頬に当てた。
「ろ、ロー? あの、」
俺が困惑していると、ローは俺の手を握ったまま再び口を開けた。
「またいつか」
それだけ言って、ローは立ち上がるとその場から去っていく。俺はしばらくその場で固まって動けなかった。
な、な、な、な…………な……!!! 何だったんだ今のは!? お、俺、今、ローにキスされた!? 手の平だったけど、で、でも、キ、キスだよな……!?
――『またいつか』
その言葉は嬉しいはずなんだが、次会った時はどういう顔をすればいいのかわからない。俺の頭の中はぐちゃぐちゃになっていた。
結局俺はその後ずっとローの行動の意味を考え続け、夜になっても眠ることが出来なかった。