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玲央、千空たちとの通信手段を探る——脱出計画の始動
玲央がゼノの実験を成功に導いてから数日が経った。今や彼は、ゼノの研究を手伝う重要な存在となっていた。ゼノの信頼を得たことで、研究施設内をある程度自由に動き回れるようになったが、それは玲央にとっての「目的」ではない。
(ゼノの手伝いを続けるのも悪くないけど……オレの本命はそこじゃねぇ。)
玲央の目の奥には、別の意志が宿っていた。
(千空たちと合流するには、まずオレがここで生きてることを知らせる必要がある。)
しかし、問題はどうやって連絡を取るかだった。今の時代にスマホはないし、直接抜け出すのはリスクが高い。
「……ってことは、通信設備を探すのが一番の近道か。」
玲央は研究施設の中を慎重に歩きながら、古びた資料が詰まった保管庫に向かった。ゼノの基地には石化前の技術が多少なりとも残されているはずだ。もし使える通信機器があれば、それを修理して千空たちにメッセージを送ることができる。
保管庫の扉を押し開けると、中には埃をかぶった書類の山が並んでいた。
「おっと、これは……随分と古いもんだねぇ。」
玲央は棚を丁寧に調べ、一枚ずつ資料を確認する。
しばらく探っていると、一枚の図面が目に入った。
「……これって、通信設備の設計図?」
図面には、無線通信機の構造が詳細に描かれていた。それは明らかに石化前に使用されていたもので、もしまだ残っていれば修理次第で使える可能性がある。
(やっぱりあったか……ゼノがこれを知ってるかどうか、確かめる価値はあるねぇ。)
玲央はすぐにゼノの元へ向かった。
「ゼノ、この通信設備、まだ使えるのか?」
ゼノは資料を受け取り、じっと見つめた後、顎に手を当てた。
「これは……興味深い。石化前に使用されていた旧式の通信機だな。もし機材が無事なら、修理すれば再び使える可能性がある。」
玲央はニヤリと笑った。
「じゃあ、確認しに行くしかないねぇ。」
ゼノは玲央をじっと見つめ、意味ありげに微笑んだ。
「いいだろう。ただし、私も同行しよう。」
「へぇ、ゼノ自ら動くとは珍しいねぇ。」
「研究のためだよ。それに、君が何を考えているのか、私も少し興味がある。」
玲央は肩をすくめた。ゼノはただの研究者ではない。彼は玲央の行動の裏に何かがあると察しているはずだ。しかし、それをあえて口にせず、興味本位でついてくるあたり、ゼノらしいとも言えた。
⸻
通信設備の発見——使えるのか?
ゼノと玲央は施設の奥へと足を踏み入れた。ここは普段ほとんど使われていないエリアで、古い機材が雑多に置かれている。
「こっちの奥にあるはずだ。」
ゼノが指し示した先に、埃をかぶった機材が山積みになっていた。その中の一つ、金属製の箱のような装置に目をつける。
玲央は慎重に埃を払い、蓋を開けた。
「……これが通信機?」
内部には配線や回路が組み込まれているが、長年放置されていたせいでかなりの劣化が見られる。
ゼノが装置を覗き込み、冷静に分析する。
「配線は腐食しているが、コア部分は意外と無事だな。修理すれば使えそうだ。」
「マジかよ、やっぱゼノってすげぇねぇ。」
玲央はゼノの技術力に感心しつつ、手を動かし始めた。
「まずは電源が入るか試してみようか。」
ゼノが慎重にスイッチを入れると、装置の一部がかすかに光を放った。
「おおっ、まだ生きてる!」
玲央は興奮しながら装置を叩いたが、すぐに電源が落ちてしまった。
「……まあ、そんな簡単にはいかねぇか。」
ゼノは落ち着いた表情で装置を調べ続ける。
「電源供給が不安定なようだな。この時代に使えるバッテリーを見つけるのが先決か。」
玲央は腕を組んで考え込んだ。
「バッテリーか……代用できるものは?」
ゼノは一瞬考え、薄く微笑んだ。
「君なら、すでに答えを持っているのではないか?」
玲央はゼノの言葉を聞いてハッとした。
(……この感じ、まるで千空とのやりとりみてぇだな。)
ニヤリと笑い、玲央は自信満々に答えた。
「電気が必要なら、手っ取り早い方法があるねぇ。」
ゼノも満足げに頷いた。
「では、やってみるとしよう。」
玲央の脱出計画が、いよいよ本格的に動き出した——。