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そしてとうとう部活動が始まった。放課後の清掃活動が終わると、かばんを持って真っ先に調理室へ向かった。私たちの教室からはそう遠くない。早足で向かった。
「いらっしゃい!」
「あら、新入り?」
そこには六人の人がいた。
「自己紹介してもらっていいかしら? ちなみに私は神銅桜、この街唯一の神社花咲神社神主の娘よ。部活では副部長を務めているわ。よろしくね」
厳しそうな先輩に急かされた気分になり私は慌てて名乗った。
「鈴村美紗紀です」
続けて望美も名乗った。
「月夜望美です」
すると、桜先輩とは違う穏やかそう(そしてどこかで見たことのある)先輩が挨拶をしてくれた。
「私はこの部活の部長、天宮氷雨だよ。生徒会長と兼任しているから忙しいけど、よろしく」
「ここ、部長が幽霊部員っていう珍しい部活なのよね」
「先輩、そんなことないと思いますよ」
そう発言したのは2年生らしき人物だ。三人同時に声を合わせて言っていた。初めにギャル風の先輩が自己紹介をした。
「あ、1年生? やっほー、あたし一条緋華莉(いちじょうひかり)だよ。 この部活の2年生。こっちの一つ結びは友達の花海
ののは、こっちのベリーショートは音村琴美」
「「よろしくおねがいします」」
琴美先輩とののは先輩が同時に挨拶をした。どうみても親友同士だ。
「あ、そうだ、部の情報交換用にグループチャットに入って欲しいんだけどいいかな?」
ののは先輩がスマホを出してきた。グループIDを入力して、参加するシステムだ。私はそのIDを画面に入力した。
「美紗紀ちゃん、ユーザー名教えてくれる? このグループ招待が必要だから」
私はユーザー名を伝え、入れてもらった。
「ここでは活動予定とか部の合宿、コンクールとかの予定を配信してる。年度ごとにいらないデータを削除して使いまわしてるわ」
琴美先輩が説明をした。
「あと、どのユーザーが誰かのメッセージは部長が送ってくれたから、わからない時はみてね」
そうして色々な手続きを終えると、さっそく活動が始まった。製菓部では毎年新入部員がデコレーションを考えたドーナツを作るという。先輩たちが生地を用意している中、私たちは他クラスの1年生、星野晶穂(ほしのあきほ)や望美とともに必死で考えた。
「全部同じにしてもいいけど、一つテーマを決めてその中で少しデザインを変えるのはいいかもしれないね。じゃあ、惑星と冥王星とかどう?」
「たとえばどうするの?」
天文好きの望美らしい発想だが、私には全く理解ができなかった。
「空気がない水星はプレーン、金色の金星はレモン、色々な生物のいる地球はフルーツミックス、赤い火星はイチゴ、太陽系最大の惑星木星は、とても大きいフルーツのメロン。たくさんの氷などが集まってできた美しい輪を持つ土星はたくさん粒があるぶどう、天王星は寒いから冬が旬のりんご。海王星は青いからブルーベリー、冥王星は同じような惑星がたくさんあるから似た形の粒が集まっているオレンジ」
珍しく目を輝かせて熱弁する望美に私も思わず目を輝かせた。
「なるほど、いいね!」
「わたしもいいと思う!」
生地を作り終わって型抜きの手伝いをしている部長に声をかけた。
「なるほど、天文をテーマにしたのね。テーマ性はお菓子において大事よね。冷蔵庫に置いてあるの出してくるから、揚がるまでちょっと待っててね」
それなりの時間が経った。私たちは協力してアイシングに取り掛かり、完成させた。
「よくできたわね! 天文がテーマなのは、新しくていいと思うわ」
あんなに厳しそうだった桜先輩が顔をほころばせて言う。
「うん、アイシングのバランスもいいし、技術面でもバッチリね」
部長がコメントをくれる。
「一個だけ先生用に残しておいてね」
その言葉を聞きつけたかのように顧問の先生がやってきた。名前は芙龍はなといい、家庭科教師と言っていた。先生はレモン味を手に取り、「斬新なアイデアね」と一言残して去っていった。
「先生自由ですね」
「うん、授業でもあんな感じだからな」
初めての部活動。これから楽しくなりそうだ。