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何週間という時が過ぎる。私はいつものように学校へ行き、授業を受け、部活で練習をこなす。日々のルーティンに埋もれながら、心のどこかで何か違和感を感じていた。

その帰り、桜は私に「先に帰っていて」と言って、どこかへ行ってしまった。いつもと違うその表情に、言い知れぬ不安が胸をよぎった。

その夜、病院内はあわただしかった。桜が帰ってきていない。彼女はいつも時間通りに帰ってくるのに。何かが起きたに違いない。

次の日、私は二葉と真希にこのことを話した。二人の表情が一変し、真希が声を張り上げた。

「なんだって!?それは本当かい!?」

「うん、先生たちもみんな心配していて……」

「そんな……桜ちゃん、どこへ行っちゃったの?」

奏は黙っているが、その顔には焦りと不安が見え隠れしていた。桜のことは心配だ。でも、私たちには探す術がない。学校の先生たちも血眼になって探している。それなのに、どうしても不安で胸が張り裂けそうだった。

その夜のことだった。窓をトントンと叩く音がする。カーテンを開けるとそこにいたのは、翼が生えた真希と二葉の姿だった。

「やぁ、星歌。奏。」

「真希……二葉……!?」

二人は翼を生やし、空を飛んでいる。

「桜を探しに行くぞ。」

「……え!?」

真希に手を引かれ、窓から身を乗り出すと、私や奏の背中からも翼が生えた。

「桜の居場所を探知している。今は隣県の港町の自衛隊基地にいるみたいだ。」

「天狗病ってすごいね!?」

しかし、なぜ桜がそんなところにいるのだろう。私は訳が分からなかった。

「狂獣病……」

奏がクリスタルを口からこぼしながらそうつぶやく。

「確か、あの病は昔人体実験で生まれた病だ。流した血は結晶化して体にまとわりつき、防護服となる。そして、死を恐れず戦い、軍を勝利に導くのだと聞いた。」

「それじゃあ桜ちゃんが自衛隊基地にいるのって!」

彼女はきっとその病を利用され戦争に駆り出されようとしているのかもしれない。そんなことをしたら彼女は狂ってしまう。人間でなくなってしまう。

「急ごう!まだ間に合う!」

私たちは病院から飛び立ち桜のいる自衛隊基地に向かった。

桜side

なぜ戦争なんてあるのだろう?――それが人間の業だ。

なぜ私が戦わなければならないのだろう?――それはお前の力が強いからだ。

なぜ私は生まれてきたのだろう?――それは運命だからだよ。

うるさいうるさいうるさいうるさい。 私に話しかけてこないで。私の前に出てこないで。そう叫んでも祈りが届くことは無い。

生まれた時から、注射を打たれ続け何度も何度も戦いに出されてきた。そんなことをされ続けていたら、いつの間にか目の前にもう一人の私がいた。

あまりにも辛い毎日。 逃げ出したくても逃げ出せない。苦しい。ここから出して欲しい。そう願い続けたら初老の男性が私を連れ出してくれた。確か名前は獅子合 りょうがと言ったか……

「ここに狂獣病の人間がいるだろう。全員解放しろ」

父さんの手下はその人の凄みに負け私たちを解放した。そして手当のために連れてこられた場所があの病院だった。

そこで私は平穏に暮らした。音楽をやる仲間もできた。楽しかった。でも、もう一人の私はこう囁く。

「お前は戦いの中でしか生きられない」

「お前はあいつらとは釣り合わない」

「戦え、戦え。それがお前の定め」

ずっとそんな言葉が聞こえてきた。そして病院に届いた一通の手紙。

「お前の仲間を危険に晒したくなければ我々と共に来い。決意が固まったら以下の場所で待つ」

差出人は父だった。私が戦わなければみんなが危ない。この国は今戦争をしようとしている。私が戦わないと。みんなが死ぬ……?

私は離れることを選んだ。私が戦えば皆が平和に生きられる。私の命と平和。どちらが大事なんて問うまでもなかった。 「先に帰っていて」 それがあの子と交わした最後の言葉。さようなら。どうか戦いのない場所で平和に暮らして。でも叶うことならもう一度だけ音楽を奏でたかった。

そして、父に会った瞬間。あの注射を打たれた。

あぁ。人格が塗り替えられていく。

自分の心がバラバラになる。狂っていく。

戦いたくない。

戦いたくない。

タタカイタクナイ

タタカイタクナイ

タタカイタイ

タタカイタイ

戦いたい

戦いたい

さぁ、殺しあおう。

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