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一話完結 また明日
夏の終わり。
夕焼けに染まった学校の屋上で、私は一人、古びたベンチに座っていた。
「……今年も、終わっちゃうなぁ」
隣には、誰もいない。
それなのに私は、いつものように話しかけた。
「ねえ、覚えてる?」
返事はない。
「初めてここに来たとき、授業サボってたから二人とも先生に怒られたよね」
風が吹いて、フェンスに結んだ小さなリボンが揺れた。
私は笑った。
「『授業をサボるな!』なんて言われたのにさ」
――あの日も、こんな夕焼けだった。
中学一年生の春。
クラス替えで誰とも仲良くなれず、一人で昼休みを過ごしていた私に、彼が話しかけてきた。
??? 「ねえ、今日ひま?」
えと「……え?」
???「俺、暇だからさ一緒に屋上行こうよ!」
えと 「屋上、入っちゃダメじゃ……」
??? 「じゃあ、ちょっとだけ!」
それが、私たちの始まりだった。
それから毎日。
嬉しいことがあった日も。
嫌なことがあった日も。
テストで最悪の点を取った日も。
私たちは屋上に集まった。
??? 「大人になっても、ここに来ようね」
えと「うん」
???「十年後も!」
えと 「十年後はもう大人じゃん」
???「じゃあ、二十年後!」
えと「そんな先まで?」
??? 「当たり前でしょ」
彼は笑って、小指を差し出した。
???「約束!」
私も小指を絡めた。
えと 「約束」
だけど。
悲劇は起こった。
高校一年生の冬。
彼は突然、居なくなった。
後日「サイアク」な知らせを聞いた。
彼は虐められていたらしい。
「ねぇ、」
「何?」
「やっぱり何でもない」
「……うん」
この時、私が少しでも探って話を聞いて、慰めてあげて、イヤなことを少しでも忘れさせられたらどんなに良かったことか。
いまさら後悔しても遅かった。
卒業しても。
大人になっても。
私は時々、この屋上に来た。
そして、彼が好きだったななチキを食べる。
ななチキ、上げたら喜んでたな(微笑)。
「……十年経ったよ」
私は小さく呟いた。
「約束、守ったよ」
すると――
風が吹いた。
フェンスのリボンが大きく揺れる。
その瞬間、足元に一枚の紙が落ちてきた。
「……?」
拾い上げる。
見覚えのある文字だった。
震える手で、紙を開く。
『もし、これを読んでいるなら――』
そこから先を読むのが怖かった。
それでも、私はゆっくり読み進めた。
『十年後の今日、ここに来てください。』
『たぶん俺は、そこに行けません。』
『でも、あなたには来てほしい。』
『だって、俺たちの約束だから。』
涙が落ちた。
『俺は、あなたと出会えて、本当によかった。』
『一緒に笑ったことも、泣いたことも、喧嘩したことも。』
『全部、俺の宝物です。』
文字が滲んで見えなくなる。
最後の一行だけ、何度も何度も読み返した。
『だから――』
『俺の分まで、明日を生きてください。』
私は空を見上げた。
夕焼けが、あの日と同じ色をしていた。
「……ずるいよ」
涙が止まらなかった。
「そんなこと言われたら……」
私は笑った。
「明日も、生きるしかないじゃん」
しばらくして、涙を拭いた。
そして、屋上の扉へ向かう。
最後に振り返る。
「じゃあね」
誰もいないベンチに向かって言った。
「また、明日」
扉を開ける。
その瞬間――
背中から、懐かしい声が聞こえた気がした。
『うん。また明日!』
私は振り返らなかった。
振り返ったら、きっと泣いてしまうから。
ただ、少しだけ笑って。
私は未来へ歩き出した。
――明日は、きっと今日より少しだけ、いい日になる。
そう信じて。
あなたは???が誰か分かりましたか? また明日 完
Sea Otter2026
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るり
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コメント
1件
るりさん、読ませていただきました…🤍 「また明日」って言葉が、こんなに切なくて、あったかいんだなって思いました。 屋上で一人、誰もいないベンチに話しかけるシーンから、もう胸がぎゅっとなりました。 「俺の分まで明日を生きて」って言葉、ずるいよ…でも、生きる勇気をもらえる言葉だなって。 最後、振り返らずに笑って未来へ歩き出す主人公が、すごく眩しかったです。 一話完結でここまで心を揺さぶられるって、本当にすごいと思います。 素敵な作品をありがとうございました🌙