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のりもちさん
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楽屋のドアを開けた瞬間、
勇人は空気の違いにすぐ気づいた。
照明はいつも通り明るいのに、
部屋の真ん中だけ、少し影が落ちているように見えた。
そこに仁人がいた。
椅子に腰掛けたまま、スマホを持つ手がわずかに止まっている。
普段なら気配に気づいて顔を上げるはずなのに、
今日は反応が一拍遅れた。
ゆっくりと顔を上げた仁人の目元――
仁人の目元が赤いのを見た瞬間、胸の奥がひどく軋んだ。
泣いた跡を隠すように伏せたまつげ。
誰にも気づかれないようにしてきたんだろうと思うと、
その静かな強がりが痛いほど伝わってくる。
心の中でそっと思う。
自分たちは色んな経験をしてきた。
報われないことも多かった。失敗することも沢山あった。
泣きたいと思う夜を何度も過ごした。
それを否定するつもりなんてない。
仁人が泣くことも、弱ることも、それでいい。
言葉にしてしまえば、きっと仁人はまた自分を責める。
だから言わない。
言わない代わりに、そっと隣に座る。
肩が触れるか触れないかの距離で、仁人が逃げないように。
仁人が一人で泣いた事実だけが胸に刺さる。
その痛みを悟られないように、勇人は静かに息を整えた。
――一人で泣かないでほしい。
俺がそばにいたいんだ。
それだけでいいんだよ。
その願いは仁人の横顔を見つめる瞳に滲んでいた。
コメント
1件
読ませていただきました…! 仁人が泣いた跡を隠そうとするところと、勇人が「言わない」と決めて隣に座る距離感が、とても繊細で切なかったです。特に「一人で泣かないでほしい」という願いを、言葉にせず視線だけで伝えるラストが胸に刺さりました。二人の関係性が静かに滲む、大好きな描写でした🌷