その日から俺は先生に勉強を教えてもらったり、たまに一緒の部屋で寝たいってお願いした。
いつだって優しく受け入れてくれるけど上手く自分の気持ちを伝えられているかわかんなくてもどかしくて、けど近い距離感でいられる今が嬉しくもあった。
夜、テレビを見ていると同じ会社で働く男性同士の恋をテーマにしたドラマが始まってなんとなく俺はそれを観ていた。
「···珍しいね、若井くんがドラマ観てるの」
「この人は会社の後輩が好きで色々大変で···けど最後はやっぱりドラマだか上手くいくのかな···」
どんなに辛くても最後はハッピーエンドになると思う、けど現実は···。
「上手くいくんじゃないかなぁ···ドラマだもん、けどリアルでは好きな人に好きになってもらうのって結構難しいことだよね」
「そうかも···先生はどんな人がすき?」
先生のそういった恋愛の部分を少しでも知りたいとさりげなく聞く。
「難しいこと聞くなぁ···僕はあんまり恋愛で成就したことないからよくわかんないかもしれない」
自虐的に寂しそうに笑って部屋に戻ろうとする先生に俺はつい思ったことを素直に声に出してしまっていた。
「それは、先生の好きになる人が男だから?」
「······ごめん、ごめんね。だから僕に聞いてもどうしようもないよ」
いつも通りの穏やかさで、でも俺はその時初めて先生から“拒否”を感じた。
「違う!ごめん、ヘンな意味で言ったんじゃない、俺は···」
「うん、わかってるよ。おやすみなさい」
先生は俺を見ることなく部屋に戻ってしまった。
わかってない、先生はなんにもわかってない。
ただ先生のタイプはどんな人なんだろうか、同性が好きなら俺にチャンスが少しくらいあるんじゃないかって知りたかっただけだったのに。
先生からの初めての“拒否”に俺はその部屋のドアを開けることが出来なかった。
2人なのに、1人より寂しい夜だった。
コメント
6件
ちょ〜っと亀裂が入っちゃった?
うわー⋯藤澤さんに全然好きが伝わってないわ。若井さんをそんな直接的に突き放さないであげてよ。可哀想😢
💙が伝えたかった事は違うのに、みえない壁がある感じに🥲 最後の2人なのに1人より寂しいが、めっちゃ刺さりました〜😇💓