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「桜木 涼香様とおっしゃる方が来られてまして、ご親戚とのことで、お約束は無いそうですがどう致しましょうか?」
受付からの内線。
桜木 涼香――琴音のお姉さんだ。
「ああ、すまない。第3応接室に案内してもらえるかな?」
「かしこまりました」
いつかは挨拶しなければと思っていたからちょうど良かった。正直言えば、約束も無しに来られ、まだ心の準備 ができていない。
どうしても俺を会わせたくないとの琴音の言葉に、結婚の報告を全て任せてしまっていた。何を聞いても大丈夫だとしか言わなかったけれど、きっとお姉さんにいろいろ言われたに違いない。
いい機会だ。
今日は俺からキチンと話そう。
「お待たせしました」
お姉さんは、ツンとした表情でソファに座っていた。
「龍聖さん。お久しぶりね」
「今日は……わざわざありがとうございます。私の方からご挨拶に伺うべきでしたが」
「ずいぶんお仕事がお忙しいみたいで。まあ、鳳条グループの御曹司だから仕方ないわよね」
かなりトゲのある言い方だ。
「あまり時間がないので私から。妹さんの琴音さんと結婚させていただきました。これから先もどうぞよろしくお願い致します」
「いつまでなの?」
「……いつまで?」
「あなた達、契約結婚なんでしょ? 1年間だと聞いたけど、ちゃんと別れるんでしょうね?」
圧のかかった質問に、一瞬たじろぎ、鋭い視線に突き刺されそうになった。
「……琴音さんから聞かれましたか?」
呼吸を整え、なるべく冷静に言った。
「そうよ。あんな地味な子が鳳条グループの御曹司と結婚するって言うからおかしいと思ったのよ。それで問い詰めたら白状したわ。聞いて納得だった。確かに、パパの工場に融資してもらったことにはお礼を言わないとね。でも、お金のために偽装結婚するなんて」
琴音……
お姉さんにこんな風に詰められて、きっとつらかっただろう。一緒にいてやれなかったことを今さらながら後悔した。