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『エドワードの手記:最初の祈り』
エレノアの病状は日に日に悪化している。現代医学の限界を宣告されたあの日から、私の世界からは完全に色が失われた。
だが、私には諦めるという選択肢など存在しない。GSウイルス――筋繊維に干渉し、劇的な細胞の再構成をもたらすあの未知の因子。世間が病魔と恐れるそれを、私は救済の糸口として見出している。
私の研究は破壊のためではない。ただ一つ、エレノアの蝕まれた身体を組み替え、新たな生命力を吹き込むための「織り機」なのだ。
2.観察手記の断片
* 検体081、ウイルスを投与してから7日以上経過した。検体の状態は良好である。筋力の一時的な低下が見受けられたが、一時的な副作用に過ぎないだろう。その後、検体の筋繊維は肉体の内部で強靱な繊維へと変質した。研究は順調に進んでいる。エレノア、待っていてくれ。必ず君を病から……
3.変容の夜
その日の夜。研究室には、耳障りな軋み音が絶え間なく鳴り響いていた。
拘束台の上で、検体081の肉体を作り替えるように変質した筋繊維が皮膚を突き破り、うねり、解かれ、まるで目に見えぬ針で再構築されるように編み込まれていく。
私は、その凄惨で美しい光景から片時も目を離すことができなかった。
……。
やがて、ピタリと音が止んだ。
耳が痛くなるほどの不気味な静寂が研究室を支配した。
そして、暗がりの中、誰のものとも知れぬ生暖かい血が、机上に開かれた手記の最後に飛び散った。
4.救われなかった「祈り」と、新たな「ジェネシス」
あの日、世界は絶望の底へと叩き落とされた。
手記を染めた血を前に、私の浅はかな祈りは打ち砕かれ、世界もまたジェネストリエーションの汚染によって破滅へと転がり落ちていった。理性を失った「迷い子(ロストール)」が溢れ、あちこちで「拒絶種(リジェクター)」の悲鳴が響く地獄。
誰もがそれを終焉と呼ぶだろう。
――だが、私はその暗闇の奥底に、圧倒的な「光」を見出してしまったのだ。
解かれ、崩れてゆく世界の中でこそ、真なる織り直しは始まる。
我が子アランに宿した「未完の黒」。彼の中に秘められた純度こそが、すべてを束ね、完璧な美しさへと繋ぎ止める真の道筋なのだから。
現在、私は崩壊したウェストミンスター寺院の静寂の中で、アランの帰りを待っている。
全てが終わり、彼の『黒』が世界を包み込み、新たな始まりを迎えるその日のために――。
コメント
1件
おお、このサブエピソードやばい…! エドワードの手記って形で、彼の狂気の根源と「織り直し」のビジョンが一気に深掘りされててめっちゃ引き込まれたわ。エレノアを救いたい一心で研究を始めたのに、その先にあったのが世界の再構成とかアランの黒とか…純粋な祈りが堕ちていく過程が凄惨で美しかった。本編の背景が一気に繋がった感じで、世界観の厚みに震えた🔥