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夜。香油の艶やかな色に誘われて、今日も仕事疲れの男たちがやってくる。
…僕はまた心を黙らせて仕事に向かう。
綺麗で汚い、紙一重の歓楽街。
(晋也目線)
…来ちゃったなぁ。酒が入って調子に乗ってた同僚に連れられて、だけど。
晋也)…ノリー…このメニュー?的なのどうしたらいい?
紀一)ん?メニュー?メニューじゃねえよ。
紀一)これはなー…指名?ってやつ。好きな子選んで一緒に酒飲んだり〜…たくさん金払ったらそういうことできんの。
晋也)なる、ほど?
俺酒弱いし、話すだけで十分なんだけどな…。でも店の利益削るわけにもいかないだろうし。
紀一)まあまあ、気楽にしろよ。
晋也)…わかった。
そう言って、指名できる嬢を見せてくる。
…この子にしようか。
少しパラパラと開き、今日出勤していておとなしそうな…それどころか儚さすら感じる風貌の子を選んだ。
紀一)お、その子か〜
晋也)この子にした。
紀一)俺はね〜、この子にしたわ。すごい可愛いよな!
…確かに目はパッチリ、鼻筋も通って所謂美人と呼ばれるタイプ…
…でも俺はこの子…『翡翠』って子に惹かれてしまった。
晋也)ノリ、また後で。
紀一)おう、晋也もまた後でな!
酔っ払った少し大きな声でお互いの指名した子のところに向かう。
晋也)…はじめまして?
まずい。どんな挨拶したらいいんだ。
翡翠)…はじめまして。
…か細い、小さな身体にしてもかなり小さくて控えめな声で返された。
晋也)…とりあえず、座ろっか…?
翡翠)…はい。
小さな声で応える彼女は、透き通った瞳の奥に どこか悲しそうな雰囲気を纏っていた。
翡翠)…あの…何か、飲まれます?
…そうだよな、何か飲まないとな。
晋也)んー…俺は酒弱いからな…。度が弱くて何か洒落た飲み物があれば…貰いたい。
翡翠)…分かりました。
それだけ言って、彼女はマリンブルーの炭酸水のような物をグラスに注いで持ってきた。
彼女は素人目にもかなり緊張してる様子だった。
彼女は恐る恐る、何か聞きたげにしていた。
翡翠)…お兄さんは…何という名前なんですか?
晋也)俺?俺は晋也って名前だよ。高木晋也 。
翡翠)晋也さん、ですか…。
…なんか…可哀想になってくる。とてもこんな接客には向いていなそうに見えた。
少しお酒を追加して、少し話して。
その後お金を払って…
翡翠ちゃんに別れを告げて帰った。
彼女は帰り際、また来て欲しいとニコニコして言っていた。
それを見て、俺もまた少し笑い返していた。