第五人格 隠囚
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放課後の教室は、窓からの光が少しだけオレンジ色になってきて、静かであったかい。
隠『ルーカス、今日もいると思ったよ』
声をかけて来たのは、担任の
アルヴァ・ロレンツ。
窓の光で白銀色に輝く髪が揺れて、
ほんのり暖かい色に見える。
隠『また課題たまってるんだろう?』
囚『よくわかりましたね…』
隠『毎日見てればわかるよ』
アルヴァ先生は私の隣に当然みたいに座って、持ってきたミルクティーを1本机に置く。
隠『ルーカス甘いの好きだろう』
囚『なぜそれを?』
隠『見ているから』
アルヴァ先生はさらっと言うけど言われたこっちは 心の準備が追いつかない。
ミルクティーのキャップを開けながら、
横顔をちらっと見る。
夕陽で照れされた先生の顔が、やけに綺麗で胸の奥がふわっと温かくなる。
隠『ルーカスは、いつも真面目なのに時々
ぼーっとするようだね 』
『今も少ししていた』
『なぜだ?』
囚『アンタのせい…』
隠『え、?』
囚『ああいう言い方するから、…いちいちドキッとするんです』
言ってから、耳まで赤くなるのが自分でもわかる。
先生は驚いた顔をしたあと、急に笑って
少し声を落とした。
隠『では、もっとドキッとすること言ってもいいかな?』
近づけられた顔に、心臓が一気に忙しくなる。
図書室の静けさが、逆に世界を狭くして、逃げ場がなくなる。
隠『ルーカスのそういうところ、私は好きだよ』
時間が止まったみたいだった。
囚『…好きって、そういう意味で?』
隠『そういう意味で』
返事ができないほど胸がいっぱいになる。
でもアルヴァ先生は返事を待ってくれるかのように、
優しく微笑んでいる。
だから勇気を少しだけ絞り出す。
囚『…私も、先生が好きです。ずっと』
先生の目が驚きと喜びで揺れて、次の瞬間、私の頭をそっと撫でた。
隠『では、明日からまた、放課後会ってはくれないだろうか』
囚『先生が望むのならいくらでも』
アルヴァ先生がくれたミルクティーは、いつもより甘かった。
でもきっとそれは、先生のせいだ。
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コメント
2件
そのミルクティーは私が頂いておきますねありがとうございます...