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水の魔女〜身代わりの一輪〜

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水の魔女〜身代わりの一輪〜

1 - 水の魔女〜身代わりの一輪〜

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2025年12月20日

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私は水の魔女。今日もほうきに跨がり、風に乗って各地を旅していた。

ある国の門をくぐった途端、一人の少女が必死な形相で駆け寄ってきた。

​「リラー! どこにいるのリラー!」

「……何かあったの?」

「昨日から姉のリラが帰ってきてないの。あなたは?」

「さっき着いたばかりの、旅の魔女。よかったら捜すのを手伝うわ」

​私は頷き、上空から目を皿のようにして捜索を開始した。

しかし、街の北側。陽の当たらない路地裏で感知したのは、凍りつくような殺気と、断ち切られた悲鳴だった。

​「……っ、そこね!」

​ほうきを極限まで加速させ、空気を切り裂き急降下する。

路地裏に飛び込んだ瞬間、目に飛び込んできたのは、狂気に満ちた男が、震えるリラに向かって包丁を振り下ろす光景だった。

​「やめて!!」

​リラが絶望に瞳を閉じた瞬間、その前に小さな影が割り込んだ。

——ドスッ、という鈍い音。

​「……え?」

​目を開けたリラが見たのは、自分を庇って刃を受けた、妹のエラの姿だった。ずっと姉を捜していたはずの妹が、再会の瞬間に自らを捧げ、盾となったのだ。

​「リラ……よかった……無事で……」

​エラは力なく微笑み、そのまま崩れ落ちた。私は激昂し、荒れ狂う水流の魔法で男を路地の奥まで吹き飛ばすと、すぐさま二人の元へ降り立った。

​エラの傷は深く、石畳はまたたく間に紅く染まっていく。

「リラァァァーッ!!」

冷たくなっていく妹を抱きしめ、リラが喉を枯らして泣き叫ぶ。

​私はその光景を、ただ立ち尽くして見つめることしかできなかった。

水を操る私の魔法は、どれだけ尽くしても、流れ去った時間を戻すことはできない。水面に映る死という運命を、書き換えることは叶わないのだ。

​「……っ!」

私は、どうすることもできなかった己を悔やみ、白くなるほど強く拳を握りしめた。

​「お姉ちゃん、泣かないで……」

​その言葉を最期に、エラが再び目を覚ますことはなかった。

驚いた鳩たちが、悲鳴を置き去りにするように一斉に空へ羽ばたいていく。

空からは、彼女たちの頬を濡らす涙のような、冷たい雨が降り始めた。

​夜が明け、鮮やかな朝日が世界を黄金色に染める頃。

リラは墓地で静かに祈りを捧げていた。

​「一緒に探してくれて、ありがとう」

「……いいえ。私こそ、何もできなくてごめんなさい」

​ふと見ると、エラの墓の傍らに、見たこともない小さな青い花が咲いていた。

まるでエラが「もう泣かないで」と微笑んでいるような、優しい色。

リラはその花を愛おしそうに摘み取ると、自らの髪へと挿した。

妹の想いを、その命を、一生忘れないために。

​「私は、行くわね」

「ええ……色々と、本当にありがとう」

​朝日に背を向け、私は再びほうきに跨がる。

私の旅は、続く。

​Fine.

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