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み
3
nono 🍏🎹
1,179
プロローグ
洗面所の鏡に向かって、俺はいつものように自分の顔を睨みつけていた。
いや、睨んでいるわけじゃない。ただ、普通に自分の顔を確認しているだけだ。それなのに、鏡の中の男は、世界中のすべてを突っぱねるような、ひどく冷徴な目をしている。
「….やっぱり、キツいな」
ぽつりと呟いた声が、狭い洗面所に虚しく響いた。
俺の目は、目尻がすっと斜め上に跳ね上がっている。いわゆる「ツリ目」だ。
母親からは「涼しげでカッコいいじゃない」なんて慰められるが、そんなのは身内の贔屓目でしかない。
高校という、無駄に人間関係に敏感な狭い世界において、この目は圧倒的に損をしていた。
新学期が始まってからもうすぐ一ヶ月。
クラスの連中とそれなりに話すようにはなったが、どこか一線引かれているのを感じる。
『若井くんって、最初めちゃくちゃ怖そうだなって思った』
『機嫌悪いのかと思って話しかけづらかったわー』
笑い話のついでにそう言われるたび、胸の奥がちくちくと痛んだ。
怒ってもいないし、睨んでもいない。ただ普通にそこにいるだけなのに、俺の見た目は勝手に周囲に壁を作ってしまう。
だからいつの間にか、人と視線を合わせるのが少し苦手になっていた。
変に誤解されないよう、学校ではなるべく感情を顔に出さないようにする。
それがさらに「クールで近寄りがたい若井くん」という虚像を作り上げている悪循環には、もう気づかない振りをしていた。
ガタゴトと揺れる満員電車に揺られながら、スマートフォンにイヤホンを挿す。
お気に入りのギタープレイを耳に流し込みながら、うつむき加減で通学路を歩いた。
五月の風は、少し汗ばむほどに暖かい。
周りの高校生たちは、楽しそうに笑い合いながら校門をくぐっていく。その中心にいる奴らはみんな、柔らかくて、親しみやすい、優しい目をしているように見えた。
「おはよ、若井。今日も眠そうだな」
「…おはよう」
下駄箱で声をかけてきたクラスメイトに、なるべく口角を上げて挨拶を返す。
それでも、相手が一瞬だけ身構えるのを、俺の鋭い視界は逃さなかった。ほら、まただ。
ため息を噛み殺して、教室の自分の席に座る。
窓の外には、要一つない青空が広がっていた。
俺のこの、冷たい三日月みたいな目。
いつか、これを見ても怖がらずに、真っ直ぐに笑いかけてくれる人なんて、現れるのだろうか。
そんなありえない妄想をかき消すように、俺は机に突っ伏して、目を閉じた。
何ヶ月ぶりかの新作!
ぜひたくさん読んでください♪
コメント待ってます👐
コメント
1件
良すぎます!!