ヘルメス「…..ねぇ……君さぁ……君だよね、これ…….」
アレス「何言ってんだお前」
電話から腑抜けたアレスの声が聞こえる
ヘルメス「僕の神殿に、こんなことしたの」
アレス「いやーお前今日誕生日じゃん?この前浴びるほど牛が食べたいって言ってたからさー」
ヘルメス「確かに言ったよ!言ったけどさぁ!」
ヘルメス「限度があるだろ!!!」
目の前に広がるのは、
いや、反り立つのは
馬鹿でかい神殿にいっぱいに敷き詰められた、牛丼
アレス「ハッピーバースデーヘルメス、良い1日にしろよ」
ブチっ
一方的に電話が切れる。
ヘルメス「、、、あいつ、次会ったらどうしてやろうか、、」
呆然と、牛丼神殿を見ながら呟いた。
牛丼を食べ続ける地獄の数ヶ月が幕を開けた…..
もぐもぐと牛丼を食べ続けるヘルメスはふと、アレスはめったに金を使うことがないのを思い出し
(彼奴金の使い所おかしいだろ、、!!)
と思ったのだった。
普通に数ヶ月牛丼生活でキレそうになってるヘルメス(牛丼は神様パワーで保管してる)(もったいない精神で捨てることもできない)(つーかどこに捨てんだよ)
↓
アレスからの愛(圧)のこもった誕生日プレゼント――神殿いっぱいの牛丼。
最初の三日はいい。笑えた。感動もした。うまかった。
だが、四日目を過ぎたあたりから、ヘルメスの胃と精神は静かに壊れていった。
(……今日で46日目…いや、おかしいだろ……)
机に突っ伏しながら、胃薬を片手に空を見つめる。
目の前の机には、今日の牛丼(七味強め)。
(味変とかすればいけると思ってた。甘かった。牛丼の呪いは深い)
牛丼は神の加護で腐らない。
消えもしない。
そして量が全然減らない。
(たまに“増えてないか?”って思うときすらある)
ある日、後光を差しながら神殿に遊びに来たアポロンに言われる。
「はは、本当に3食牛丼生活を送っているとはな、実に愉快だ」
「、、光るのやめてくれる?笑い事じゃないし」
牛丼の中には当たり外れがある。
チーズ入りは神、紅しょうが多めはもう飽きた。
温玉入りは……好きすぎて最近逆に嫌いになってきた。
(僕は…牛になるのかもしれない……)
「よぉヘルメス、牛になってないか?」
ケタケタと笑いながら現れる、元凶。
アレス。
牛丼地獄の張本人。
本人にその自覚があるかどうかはさておき――いや、ある。確実にある。絶対確信犯。
ヘルメスは、涼しい顔でふざけ倒す目の前のアホに対し、
ヘルメス(殺したろか)
本当に一瞬、背中に手が伸びかけた。武器なんて持ってなくてもいける。
でもその動きを察したのか、アレスはひらひらと手を振ってかわすような仕草。
「いやー、アポロンもハーデス伯父上も、あとお前がちょっかいかけた神たちも、みーんな協力してくれてさぁ」
冗談のような、事実のようなその言葉に――
(は?)
理解が追いつかず目を見開く。
「…余程恨まれた一年だったようだな?」
にやっと笑うアレス。
まさにクソガキの顔。
全然悪びれてない。
むしろ、どこか誇らしげ。
(アポロンまで……!?)
記憶を辿る。
確かにやった。
アポロンの堅琴の弦をパスタに変えて、目の前で茹でて食った。
「パスタソロ、どう? 音も味もイタリアンだぜ?」とか言った。
本気でブチ切れられた。
しばらく口きいてもらえなかった。
、、改めて思い出すとしょーもないな
というか引きずりすぎだろ
だからモテないんだよ彼奴
(……でも、牛丼で返す? 本気で??)
「ま、誰かを頼るなら相手は選べよ! もしかしたら牛丼追加してくるかもしれんからな!」
とどめの一言を投げて、アレスは笑いながら去っていく。
「じゃ! 今年はもう恨み溜めすぎんなよ!」
そう言い残し、
嵐のように登場して、
台風のようにかき回して、
夏の夕立のように去っていった。
ヘルメスは、
静かにその背中を見送り、
牛丼の山を見つめる。
「…………」
ヘルメス(誰か、僕の誕生日、忘れてくれ)
ヘルメスは、いつになく静かに寝ていた。
表情も穏やかで、呼吸も安定している。
――が、突然、眉がぴくりと動いた。
「……やめろ、やめろって……やめろォ……!!」
寝言が漏れる。
その声はしだいに大きく、苦しげになっていく。
夢の中
目の前に広がるのは、果てしない茶色と白の大地。
空は赤く染まり、風が吹くたびに漂う――タレの匂い。
「……ここは……どこだ……?」
足元を見ると、地面が米。
歩けば、肉が跳ねる。
空からはゆっくりと温泉卵が降ってくる。
遠くの丘の上に立つ影。
アレスだ。
牛の着ぐるみを着て、笑っている。
「 ようこそ、牛丼界へ!」
「やめろ……お前ほんとにやめろ……!」
「毎日三食、牛丼食べ放題!喜べ! お前のための楽園だ!」
アレスが指を鳴らす。
すると一斉に、周囲の米がモゾモゾと動き出し、
牛丼の山が、蠢くように立ち上がって――
牛丼A「おいしいよぉ〜〜」
牛丼B「食べてくれないと腐っちゃうよぉ〜」
牛丼C「どうして捨てようとするの……?」
「うわあああああああああ!!!!」
現実
ベッドの上で、ガバッと飛び起きるヘルメス。
「はぁっ、はぁっ……!」
額には汗。
口の中には、ほんのりタレの味。
「……悪夢だ……悪夢だった……」
頭を抱えてベッドの端に座る。
「……あいつ、次会ったら本当に覚えてろ……」
その後、神殿の隅でこっそり日記を開く。
【今日の夢】
米が動いた
牛丼が喋った
アレスが牛だった
ちなみにアポロンに相談したところ、
「俺はは夢占いはしないが、
“自分の罪を食え”というメッセージじゃないか?」
と笑顔で言われてガチギレした。
ヘルメスは決意した。
あの、笑顔の悪魔に復讐すると。
100倍にして、返してやろうと。
勿論、この牛丼神殿作戦に加担した奴らにも。
「精々震えて眠れ….」
今日もヘルメスは、牛丼を食べ続けるのだった。
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