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アイツはヒネクレ者で、皮肉屋で、とても口が悪いから、人をほめたりはめったにしないし、ほめてもなにか一言余計なことを言う。
そういうところが、意地っ張りな子供みたいで面白くて……でも時々静かに沈み込む目に、暗い悲しみと諦めの色が見えた。
だからこそ、目が離せなくなっちゃったんだよな。
お人よし? お節介? 確かにそうかもしれないな。
こういうお節介は、アイツの一番嫌いなものなんだろうけど……だけど、俺が不意に落とした悔し涙に、アイツは静かに肩を貸してくれたんだ。
アイツはきっと、人の心の痛みを知ってるやつ。多分どこかで、深く深く傷ついたことがあったのに違いないんだ。
だけどそれを、人に見せたくなくて、自分を「言葉」という鎧で覆って、普段はガチガチに強がっている。『もうこれ以上傷つきたくない』……って、自分の殻に閉じこもってる、傷ついた子供。
そう思ったら……もう、ほっとけないじゃあないか?
いつの間にかアイツを目で追ってた自分に気が付いた。
アイツに『好きだ』って言ったとき、アイツはすごくビックリした顔してたけど、「キモチワルイ」とか「同性なのに」とか……そういう言葉で否定はしなかった。
告ったあと、
「ごめんな。キモチワルイよな? 忘れてくれよ」
って言って踵を返した俺の腕を、掴んで引き留めたのには驚いた。
振り向いたら、すっとそっぽを向いて、「ありがとうございます」とだけ、あいつは言った。
回り込んで顔をのぞき込もうとしたら、意地になって顔を隠す。なんだよそれ、カワイイなあ。
だけど、俺より背が高いのに上を向くのは反則だぞ!?
「月島も、俺のこと、好き?」
思い切ってきいてみたら、
「………嫌いじゃあ、ないです」
背けた耳が、少し赤くなってて、その言葉が嘘じゃないことを証明してた。