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♦︎


「気持ち悪い」

「何その目」

「消えろ」

「変な髪色…」

知らないふりをする。悪口なんか受け取ってもいいことなんかないから。

__変わらない。俺も、周りの人間も。そう考える様になってしまったのは、俺が黒く濁ってしまったからなのか。

でも、それでいい。幼い頃の様に、傷ついてばかりじゃいられない。力で奪い、闘う。

人間なんか信用できない。


そう、思っていたのに。





「桜くん」

「さくらさん!」

「おーい!桜くーん!」

「桜ちゃん〜」

「桜〜っ!!」

妙に暖かい。信用しちゃいけないのに、どうせ裏切られるのに__信じてしまった。

こいつらといると、今まで観なかったものが観えてくる。年越しの鐘の音。打ち上げ花火の音。そこらにいる猫。

全てが心地よくて、ずっとここにいたい。居たいのに___。

「また悪口を言われたらどうしよう」


眠れない夜に、嫌な記憶が蘇る。

悪口を言われて、殴られて、金を取られる。切られた。髪を、肌を。痛くて痛くて痛くて痛くて、死にたくなって、涙が出る。

もう、あの頃の俺じゃないのに。力があるのに。抵抗することができるのに。嫌な記憶は消えない。大切な人との思い出は、すぐ忘れてしまうのに。

「足手纏いなんだよ」

「気持ち悪りぃ髪色。」

「ついてくんな。」

「消えろ。」

「死ね。」

「死ね。」

「死ね」

「死ね」

「桜ぁ、お前もう、要らねえわ。おーい、みんなやっちゃっていーよー。」


嫌だ。嫌だ。嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ!!

気持ち悪い記憶が、悪夢になる。大切な記憶を蝕んでく。こんなこと言わないのに。あいつらは、こんなこと__。









俺が、弱いせいで。



悪夢が俺を、蝕んでく。


「桜くん?」

「…っは、!」

蘇枋の声で目が覚める。どうやらもう風鈴高校についていたらしい。悪夢のせいか、朝の記憶がすっぽり頭から抜け落ちている。

「…桜くん、最近寝れてる?」

蘇枋が桜の顔をまじまじと観てから言った。

「…っ…」

寝れて、いない。原因は俺が一番よくわかっている。不眠症とかの類ではなく、あれのせいだ。

ただ、どう言えばいいのか。「悪夢でよく寝れなくて」?「お前らにいじめられる夢を見た」?「昔の記憶のせいで」。…、あいつらは悪くない。だから、巻き込みたくない。自分の問題だから、自分で__、解決、できる、から。まあ、できていたらこんなに苦労していないんだけれど。

蘇枋には心配をかけたくない。だから、「ねれている」と言おう。それだけ言えば、いいんだから。本当に、それだけ。

「…っ、ねっ…寝れ、て…」

「…。」

蘇枋が真剣な顔で答えを待っている。

「…あ..」

俺の手がカタカタと震える。恐れているんだ。問い詰められて、全て曝け出してしまって、失望されるのを。

蘇枋が俺の顔を見て、驚いた表情をした。俺は今、どんな顔をしているんだ?醜いんだろうか。

ポタッ、ポタポタ…ッ

手のひらに冷たい水滴が落ちる。雨か?と思って空を見上げてみたが、雨は降っていなく、晴れていた。

「…桜くん、一回、家に帰ろう?」

結局心配させてしまった。

なら、もういいか。そう思って、俺は蘇枋と一緒に歩き出した。





もう、心はとっくに壊れていたのに。

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