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学校の門を出ると、民家の間に小道が続き、下校生徒の後姿が列を成していた。その中に、小柄で痩せた背中を見かけた。早歩きで追いつくと、そばかすの乗った高い鼻を確認した。肩をポンと叩くと、プナールは白々しくも「誰?」と言いのけた。新しいクラスで隣の席のというと、彼女は青い目だけこちらに向けた。不機嫌そうだなというと、「アンタ『なんかに』言われたくないわ」と言いやがった。
不幸にも、小道はそのまま続いた。商店が連なる大通りに突き当たると、プナールよりもさらに不機嫌そうな大人達が、余裕なさげに行き交っていた。型崩れしたスーツ、汗ばんだYシャツ、ヤニに黄ばんだ歯、さまよい泳ぐ瞳、乱れ髪にヒールのカタカタ走る音。満員バスに飛び乗ってはわざわざプレスされる人。排気ガスの臭い。バス停の先にある福祉事務所の前には、競馬新聞と煙草の吸殻が散らかっており、ついでに人も並んでいる。道端に落ちたパンを拾う老人。彼が食べなければカラスが食べただろう。車道の向こうの魚屋オリエントの前では、買い物籠からはみ出たネギ、トマト。眉間の皺にはゴシップの塵が詰まっている。彼女達はきっと、塵だってクッションになると言い出すだろう。路肩に止まった中古ルノーの脇では、若い男女が口論している。止めに入る者はいない。イスケンデル食堂では、無愛想なおばさんが今日もせわしく食器を片付けている。八百屋の店先には、鼻の下に髭を生やしたオヤジが苦い表情を浮かべながら、肝臓の辺りを押さえている。彼らも、俺達が今やっている勉強を続けた人達に違いなかった。