時間は十分間。
ここ、梵天の管理下にある建物の中での隠れ鬼。
オレが制限時間内に見つかって捕まったら、マイキー君の勝ち。オレが最後まで逃げ切ったらオレの勝ち。
オレが勝ったら、ここから出してあげるとマイキー君は言った。
「それじゃあ、スタート。一分間経ったら、探しに行くから」
マイキー君の言葉と共に、オレは駆け出した。
監視カメラやGPSなどの機器の使用は禁止。
オレは、どう考えてもマイキー君が有利な状況下で、純粋なゲームをするしかないのだ。
賽は投げられてしまったのだから。
オレが隠れることにしたのは、とある一室。
ここのフロアは薄暗くて見えづらいし、足音とかに気を付ければ逃げれるはずだ。
隠れる部屋は、いわゆる物置。
でもここは犯罪組織の建物だ。
物置といっても、犯罪で使われるような凶器ばかりで、一般人が見慣れた物の方が少なかった。
オレは数々の凶器の中から、色々と漁った。
結局選んだのは小型のスタンガンとフラッシュライトだけ。これなら、正当防衛とかで犯罪にはならないはずだ。
ぶっちゃけ、見つかった時にまともに戦おうとしても無駄だ。相手はマイキー君だから。
フラッシュライトで動けなくして、スタンガンで気絶してもらおう。
オレは、照明が壊れていて暗い物置で息をひそめた。
何分経っただろう?こうも暗いと、一分が何時間にも思えてくる。
きっとマイキー君はオレを探し始めているはずだ。まだ、このフロアには来ていないっぽいけど。
そう思いながら、フラッシュライトを握りしめた瞬間。
「──── タケミっち。いる?」
「!」
オレは慌てて、声が出ないように口を塞いだ。
フラッシュライトを握りしめる手が白くなる。
(落ち着け、大丈夫だ。バレてない、バレてない…!ここは電気がつかないから、余計に見つけづらいだろうし、オレが隠れているのも大きいサイズのキャビネットの中だ。大丈夫、大丈夫…)
しばらく、部屋を歩き回る物音が響いていた。
「………はァ…、」
マイキー君のため息が聞こえてきて、それと共に扉が閉まる音がした。
出ようか?いや待て。これ、いつかのホラー映画で見たことある。
扉が閉まったからって、マイキー君が外に出たとは限らない。まだ、部屋の中で待っているかもしれない。
(…!)
オレは、とあるアイディアを思いついた。
確か、ルールは『オレが最後まで逃げ切ったらオレの勝ち』なんだ。なら、十分間ここにいればいいじゃないか。
ここで十分間隠れていて、時間終了の合図が鳴ったら出ればいい。
その時のオレは、監禁生活で知力が著しく低下していたかも知れない。いや、元々そんなに頭は良くなかったけれども。
オレは、気付かなかった。
今のオレは、時計などの時間を目視できるようなものは何一つ所持していない。
つまり、オレは十分間を知らないのだ。
──── 『ここで十分間隠れていて、時間終了の合図が鳴ったら出ればいい』────
オレは、馬鹿なのは昔から変わっていない。
時間終了の合図?マイキー君が?彼の目的は、オレを逃がさないことなのに。
何故彼の方から負けを認めるんだ。
ゲームが始まった時から、俺は負けていたのだ。
ゆっくりと開くキャビネットの扉。
そこから覗き込むようにしてオレを見つめるマイキー君。
彼は、笑った。無邪気な子供のように。ゲームに勝ったのを、素直に喜ぶ子供のように。
コメント
3件
はっきり言ってマジで好き
続きめっちゃ楽しみです!
この物語が好きで好きでしょうがない……