テラーノベル
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その日の夜、アホライダーの部屋には火野の姿があった。
彼女はベッドの上にトランプを広げ、慣れた手つきでスピード(カードゲーム)をしながら、酒を煽っていた。
「……明日の本戦、あんたどうするつもり? 予選の連中とは格が違うわよ。中には人殺しをなんとも思ってない連中もいるんだから」
アホライダーは窓の外のネオンを見つめたまま、短く答える。
「……倒すだけだ。そこに理由も感情もない」
「ふん、相変わらずね」
火野はカードを叩きつけ、独りごちた。
一方、隣の部屋では葉弐が「ひっひっひ……これがあれば効率的に……」と不気味な笑い声を上げながら、何かをコソコソと組み立てる音が壁越しに聞こえていた。
翌日、地下深くに作られたコロシアム形式の特設会場。
立ち込める熱気と、違法な賭けに興じる観客たちの怒号が渦巻く中、派手なタキシードを着た実況者がリングの中央でマイクを握った。
「レディース・アンド・ジェントルメン! 地獄へようこそ! 今宵、世界一危険なショー『ゴールデンブラッド・トーナメント』の幕が開く! 始める前に、死にたがりの諸君にルールを叩き込んでやろうじゃねえか!」
実況者は不敵な笑みを浮かべ、六つのモニターを指差した。
「一! 形式は16名の勝ち抜きトーナメント! 負けたら即、ゴミ箱行きだ!」
「二! 勝敗はKO、降参、あるいはレフェリーによる強制停止! 10カウント以内に立てなきゃ、そこがお前の墓場だ!」
「三! 銃火器、刃物は禁止だ! だが、てめえの身体に何を仕込んでようが、どんな化け物だろうが、俺たちはチェックしねえ! 自分の肉体で証明しろ!」
「四! リングアウトはなしだ! 地べたを這いずり回っても、息がある限り試合は続く!」
「五! 観客の諸君、好きなだけ賭けろ! 欲に塗れた金こそが、こいつらの血を熱くさせる!」
「六! 試合は一対一が基本だが……主催者が『つまらねえ』と思えばルールは変わる! 運も実力のうちだ!」
「七! そして……死んでも試合は止まらねえ! 参加した時点で、お前らの命は俺たちの所有物だ!」
会場は地鳴りのような歓声に包まれた。天井の巨大モニターに、16名の戦士たちの顔が並ぶ。
「さあ見ろ、この16人の狂人どもを! 招待選手は三人! 銀の怪人アホライダー! 極北の処刑人クライデン! そして謎の重火器人間レッドギア・マスク!」
「さらに予選を這い上がった猛者ども! トニー、ビクター、ジョー、カルロス、さよなら喉仏マン、ドリス、ミゲル、ボリス、ケン、タイラー、アンドレ、イーサン、リュウ・ハヤブサ……全員が血に飢えているぜ!」
火野が観客席の隅でタバコに火をつけたその時、第1試合のアナウンスが響いた。
『第一試合、赤コーナー! 東洋から来た沈黙のオーバーテクノロジー、アホライダー!!』
アホライダーは、まるでコンビニにでも行くようなトボトボとした歩調でリングに上がった。
観客からは「なんだあのやる気のない奴は!」「死にたいのか!」と罵声が飛ぶ。
『対する青コーナー! ベガスの夜を切り裂く電光石火のストライカー、トニー・ブレイズ!!』
対照的に、トニーは華麗なバックフリップでリングに飛び乗り、両腕を広げて大歓声を浴びた。
「おい、仮面野郎。お前のその頭、スクラップにして俺の部屋のインテリアにしてやるよ!」
トニーが挑発的に拳を突き出すが、アホライダーは無言で首を傾げるだけだった。
レフェリーが両者の間に立ち、右手を振り下ろした。
――カーンッ!
乾いたゴングの音が、血戦の始まりを告げた。
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