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駅前の広場。
時計塔の傍らで河村は数人の男女に囲まれていた。
けれど、その様子は親密とは程遠い。
河村は向けられる言葉を「へえ」「そうなんだ」と適当な相槌で受け流し、視線は常に誰かを探すように周囲を彷徨っている。
その、執着の薄い、けれど洗練された立ち振る舞いが、遠目で見ている山本には、残酷なほど完成された美しさに映った。
ymmt(……あんなに完璧な河村さんに、僕が隣にいてもいいんだろうか)
胸の奥に溜まった劣等感が嫉妬に形を変える。山本は堪らずその場を離れ、路地裏の小さなカフェに逃げ込んだ。しばらくして、河村が迷いなく向かいに座った。
kwmr「山本……。どうしてあそこで声をかけてくれなかったの?」
ymmt『……ごめん。……あそこ、人が多すぎたから。……河村さんはいいよね。みんなにキラキラした顔で笑いかけられて。……僕、惨めになっただけ。……ねえ、河村さん。僕と釣り合わないよ』
山本が席を立とうとした瞬間、河村がその腕を強く掴んだ。そこには余裕など微塵もない、引き攣ったような顔の河村がいた。
kwmr「……何、今の……。『僕と釣り合わない』なんて、本気で言ってるの? 僕は、あんなやつらの顔なんて一つも見てなかった。山本がいつ来るか、それだけを考えて……。笑ってない、 あれはただの愛想だよ。……山本、お願いだからそんな顔で泣かないで。僕に必要なのは、山本だけなんだ」
河村のマンションの重い扉が閉まった瞬間、河村は背後から縋り付くように山本を抱きしめ、そのままリビングのソファへと押し倒した。
kwmr 「全然わかってない。釣り合わないなんて、二度と言わないで。僕をこんなに余裕なくさせて、ボロボロにできるのは、世界中で山本だけなんだよ」
河村は祈るように山本の唇を重ね、熱を確かめるように強引に肌を這い上がっていく。
kwmr「僕には山本だけだよ。……ねえ、僕が誰のものか、その体に全部刻み込んであげる。明日、外に出るのが怖くなるくらい、僕だけでいっぱいにしてあげるから」
翌朝、河村は山本の首筋に残る鮮やかな痕跡に目を細めた。
kwmr 「……隠さなくていい。これは、僕が君に与えた、世界で唯一の印なんだから。これからもずっと、僕の隣にいて」
そして当日。
駅前の広場、昨日と同じ時計塔の下を通りかかった時、昨日河村を囲んでいたグループの一人が期待を込めた笑顔で一歩踏み出してくる。
「あの、昨日の……! すみません、もしよければ今から——」
名前すら憶えていない相手が放つ言葉を、河村は完全に遮った。
彼は隣を歩く山本の肩をぐいと引き寄せ、山本の耳元へ顔を寄せた。
そして、背後のグループにもはっきりと聞き取れる音量で、甘く、けれど拒絶を孕んだ声でこう告げる。
kwmr「……ねえ山本。やっぱデート、もう切り上げていい?」
ymmt 『え……? っ、……っ、……』
山本が困惑して顔を上げた瞬間、河村は山本の襟元に指をかけ、ゆっくりとタートルネックを引き下げた。昨日刻み込んだ鮮やかな赤い痕跡を剥き出しにすると、その熱を確かめるように低く囁く。
kwmr「……早く帰って、昨日の続きしたい。……ね、いいでしょ?」
山本の喉がヒリりと鳴った。
自分の肌を晒す河村の指先が、あえて痕跡の場所を執拗になぞっている。
ymmt 『っ……ぁ、……河村さん……。だめ、……みんな、見て……っ』
山本は真っ赤な顔をして、震える手で河村の服の裾をギュッと握りしめた。拒絶したいのに、熱を帯びた河村の瞳に見つめられると、情けないほど体の力が抜けていく。
囁きながら、河村は顔をわずかに上げ、言葉を失って立ち尽くしている相手とグループを冷たく一瞥した。その瞳には明確な拒絶と、所有権を誇示する傲慢な光が宿っている。気まずさを悟った彼女たちは逃げるようにその場を離れていった。
kwmr「……ふふ、やっと静かになったね」
河村は今度は誰の視線も触れさせないように山本の襟元を丁寧に整え直した。
kwmr「山本。やっぱり君の隣は、僕しか似合わない。……もう、釣り合わないなんて言わせないよ」
河村は山本の指の間に自分の指を深く滑り込ませた。
そのまま歩き出したが、隣に手応えがないことに気づき、ふと足を止めた。
振り返ると、そこには羞恥の涙を溜めた山本がいた。
ymmt『……ばか、……河村さんの、ばかっ!』
kwmr「えっ、山本……?」
ymmt 『あんな、あんなこと、みんなの前で……っ! 僕、もう恥ずかしくて、この街歩けないよ……っ』
ポカポカと胸元を叩かれるたびに、河村の顔から傲慢な冷たさが消え、楽しげな笑顔がこぼれる。彼は山本の拳を優しく包み込み、自分の方へグイと引き寄せた。
kwmr「ダメ。……そんなに顔が赤いなら、余計に僕が隠してあげなきゃ。ほら、ちゃんと繋いでて」
河村は再び恋人繋ぎの手を強く握り直した。
kwmr「……続き、家まで待てそうにないな。……もっと早く歩いて、山本」
ymmt『……もう、知らないっ……!』
山本はぷいと顔を背けた。
けれど、そう吐き捨てた口調とは裏腹に、自分をリードするように前を歩く河村の手を、壊れ物を掴むような切実さでぎゅっと握り返した。
繋いだ指先から伝わる河村の体温に、結局は安堵してしまう。
河村の独占欲に振り回されながらも、その熱から逃げ出すことなんて、もう山本にはできなかった。
kwmr「……今、最高の気分。……ねえ山本、家に入った瞬間、……覚悟しててね」
河村は満足げに微笑むと、山本の歩調を追い越すように、速い足取りでマンションへの道を急いだ。
二人が角を曲がって見えなくなった後。街路樹の陰で、一人の男が立ち尽くしていた。
??? 「……マジかよ、あんな顔すんのかよ」
手にした飲み物を一口すすり、彼は溜め息をついた。
正直、チャンスがあれば山本を誘いたいな、くらいには思っていた。
けれど、今日見た彼は、自分の想像を遥かに超えて「男」に翻弄されていた。
???(……俺の前でも、あんな風に照れてくれたら良かったのに)
???「……あーあ。完敗、かな。今は、だけど。次は俺が、あんな顔させてやりたいわ」
彼は少しだけ未練がましく二人が消えた道に視線を残すと、反対方向へと歩き出した。
リクエストが来次第続き書きます!