続　好きでいさせて

好きにならなかったら良かった。

同じ男なんだから変じゃないかと断れば良かった。

どんどん変わっていく。

女の子みたいになっていく。

目黒は渡辺を女の子扱いしない。

ただ渡辺が自分が嫌なだけだ。

朝起きて、LINEでなかった事にしよう。

もう2人で会わない。

と目黒に送った。

それから少し泣いた。

仕事して帰る。

今まで通りの生活。

仕事で目黒に会っても以前のように振るまおう。

LINEに既読が付いているのに目黒は何も言ってこない。

これでいい。

何事もなく１か月が過ぎた。

寂しくない。

目黒を待ってなんかない。

家に帰ったら目黒の表紙の雑誌は片付けよう。

玄関の前に人影。

渡辺は何も言わず鍵を開ける。

玄関で後ろから抱きしめられる。

振り解いてソファまで駆けて行った。

目黒ー翔太くん！

渡辺ー帰ってくれ。

目黒ー帰らない。

渡辺ーもうお前なんか好きじゃない。

目黒ーちゃんと俺を見て言って。

目黒に肩を掴まれ向き合った。

渡辺ーお前なんか・・。

目黒ー寂しかった？

渡辺ー・・。

目黒ー俺は凄く寂しかった。

渡辺ー俺はどんどん変わっていく。

目黒ーどんな風に？

渡辺ー女の子みたいにお前を待って寂しくて会えなくて泣いてばかりだ。

目黒ー翔太くん。

渡辺ーこんなの俺じゃない。

泣かないと我慢してるのに、涙が溢れてくる。

拭っても拭っても溢れてくる。

目黒が優しく頬を撫でる。

その手を振り払いたいのに喜ぶ自分がいる。

渡辺ーこんなの俺じゃない。

目黒ー翔太くん。

渡辺ー・・泣いて・・ばかりで嫌になる。

目黒ー好き。

渡辺ーん〜ん。

目黒ーいっぱい好き。

渡辺ー・・んっ・・んっ・・。

目黒ー泣かないで。

ソファに座り込み顔を覆って泣いている。

目黒は渡辺の足元に座り、膝に頭を乗せた。

目黒ー会いにくる、翔太くんが寂しい時は会いにくる。

渡辺ー・・。

目黒ーちゃんと食べてないでしょう？　眠れてないでしょう？

渡辺ー・・んっ・・んっ・・。

目黒ーいっぱい好き。

渡辺ーもう・・好き・・じゃな・・い・・。

目黒ーじゃあ何で泣くの？

目黒が渡辺の横に座り、優しく抱きしめる。

渡辺は震えながら嫌がる。

目黒はきつく抱きしめ髪にキスをした。

渡辺は顔を覆ったまま首を振る。

目黒は渡辺の両手を掴み顔から離す。

そして、震える唇にキスをした。

渡辺ー嫌だ。

目黒ー好き、いっぱい好き。

渡辺ーい・・や・・。

目黒ー泣かないで。

渡辺ーい・・んんっ・・。

目黒ーホントに嫌い？

渡辺ー分かんない。

目黒は渡辺の両手に何度もキスをする。

震える身体。

優しく抱きしめる。

震えながら目黒の首に両腕を回して来た。

渡辺ー辛い。

目黒ー会いにくる。

渡辺ー・・。

目黒ーいっぱい会いにくる。

渡辺ー仕事・・。

目黒ー遅く終わっても会いにくる。

抱きしめて、キスをして、何度も会いにくると言う。

渡辺ー好きって言って。

目黒ー翔太くんが好き。

渡辺ーもう一度目黒を好きになりたい。

目黒ー好きって言って？

渡辺ー・・す・・き・・。

目黒ー今夜はプレゼントを持って来たんだ。

カバンから小さなフェルトのような布。

リボンが付いている。

渡辺の手に乗せた。

渡辺ー何？

目黒ー開けてみて。

渡辺ー・・。

ブレスレットが入っていた。

どちらかと言うとバングルみたい。

目黒が手に取り渡辺の右手首に付ける。

渡辺ーどうしたの？

目黒ーこの前のMV撮りの時、俺が付けてたやつ。

スタイリストさんに言って買い取った。

渡辺ー・・。

目黒ーいつも、付けてて。

渡辺はそっと撫でた。

目黒ー寂しかったら，ちゃんと俺に言って？

渡辺ー夜中でも？

目黒ー会いにくる。

渡辺ーん。

目黒が帰って。

右手首を見る。

寂しさが少し薄れた。

まだ、前と同じに好きか分からないけど、泣かないと決めた。

どうしても、寂しかったら会いたいと言えばいい。

好きの気持ちを貯めていこう。

目黒と同じくらい好きになる。

少し食べて、風呂に入り布団に潜る。

好き。

やっぱり目黒を好き。

渡辺は、久しぶりに泣かない夜を過ごした。