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◻︎結城のひらめき
私は早絵に聞きたいことがあった。
「ねぇ、結婚の意味って、何?」
「え?なに突然。結婚の意味かぁ…法律で守られた頼れるパートナーを作ることができるってことかな?」
「頼れるパートナーか。確かにね、あんな急病の時とか絶対必要だよね」
「そうだよ、夫婦じゃないと認めてもらえないことって結構あるみたいだよ」
「でも、それならお父さんでもいいよね?」
「はぁ?まぁ身内だからそうだけど。なんで結婚しないの?」
「んー、じゃあ、早絵は結婚してよかった?」
「そうきたか…。どうだろうねぇ、妊娠して出産すると、妻は母親になっていくけど、夫は夫のままなんだよね、なかなか父親にはなってくれない。だから、イラッとすることもあるし、家事育児でヘトヘトになるとかもある。それに家同士の付き合いとかも面倒かな?自由なお金も時間もぐん!と減るし」
「ふぇー、そんなんじゃ、結婚したいなんて気持ち湧いてこないよ」
「ふふっ、でもね…」
そう言ってスマホのアルバムから、家族の写真を見せてくれた。お宮参りや、初節句の仲睦まじい家族写真。みんなにこやかに笑っていて幸せそうだ。
「ほら、これ見て」
それは、生まれたてでまだ血液も付いてる赤ちゃんを旦那さんが抱っこして、3人で写っている写真。旦那さんの顔が涙で真っ赤だ。
「うちの旦那さん、立ち会ってくれたんだけどね、もうね、恥ずかしいくらい泣いてね。ぼろぼろ泣きながら私に言ったの、ありがとう俺の子を産んでくれてって。その写真とその時の思い出があるからかな?なんていうか、私の根っこになる部分が出来上がったというか…私がいるべき場所、帰る場所があるという自信ができたよ」
「ふーん…そうか、早絵の居場所か。そういうの、いいかも?今だと自由だけど自由過ぎてフラフラしてるとこもあるしね…」
結婚して家庭を築くということは、自分の居場所で守ってくれる場所が作れるということなんだ。
「それにね、美味しいもの食べるのも、楽しいことをするのも一人より二人、二人より家族がいいと思う」
_____そうか。そうだよね…
結婚のいいところは、わかった。でも私には越えないといけない壁がある。
「ねぇ、結婚ってさ、お付き合いしてください!から始まらないとダメかな?」
私は真面目な顔で早絵に聞いた。
「え?何?そんなの、始まりとかキッカケってなんでもいいと思うよ」
「それから、結婚してくださいってプロポーズはこっちからしてもいいのかな?」
「それも自由だと思うけど…って、まさか…結城君に?」
「結城君?なんでよ。違う違う!もしも、結婚したい人が現れたら、自分から言うのよ。相手から言ってくれるのを待ってたから、あの時はあんな目に遭ったんだから」
_____それに、もう付き合うとか邪魔くさい
途中で気が変わるかもしれないなら、最初から結婚しちゃえばいい!と思った。
「私、好きな人っていらない、結婚する人を探すから」
「えー、結城君はどうするの?」
「だからなんで結城君なの?」
屋上の非常階段。やたらに名前を呼ばれるのに出るに出られなくなってる結城がいた。そして、何か閃いたようにこっそり呟いた。
「そっか!付き合ってください、じゃなくて結婚してくださいって言えばいいのか!」