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「冗談じゃない。助けようと思ったけど、そんな無茶苦茶言われて助ける気がなくなった。死にたければ死ねばいい。僕は教室に戻るよ」
またフェンスをよじ登っていこうと彼女に背中を向けた途端、すごい力でフェンスから体を引き剥がされた。知らない男が突然乱入してきたのかと一瞬思ったくらいの強い力だった。もちろんそんなわけはなく、僕をフェンスから引っ剥がしたのは彼女だった。
「危ないだろう。落ちたらどうするんだ?」
「だから一緒に死のうと言ってるじゃないか」
「まだそんなこと言ってるの?」
ふたたびつかみかかってきた彼女の腕を払おうとして、誤って彼女の胸の辺りに手が当たってしまった。
「生死がかかった場面でも、男という生き物は性欲を忘れられないものなのか」
「ごめん。今のは事故で……」
「隙あり!」
彼女は僕の右手をつかむなり、僕の体を躊躇なく屋上から突き落とした。
「ああっ」
情けない声をあげる以外、一瞬の出来事でどうしようもなかった。右手だけ彼女につかまれて、僕の体全体が屋上からぶら下がっている。彼女は片手で僕の体が落ちないように支え、もう片手でフェンスの金網を握りしめている。
左手でも彼女の腕をつかんだが、そんなのは気休めにすぎず、彼女が本気で手を振りほどけば僕の体は落下して硬いコンクリートに叩きつけられるほかない。