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※ 呪術廻戦二次創作 、 解釈不一致の可能性有 、観覧自己責任 、ネタバレ要素含
「本当に、あの人を信用していいの?」
子供ながら、津美紀は冷酷だった。初めて会った白髪の高校生を目の前にして、いつもの差し出がましく、心配性の津美紀は消え去っていた。男に酷く警戒しているようで、座り込み俯いたままだった。男が手洗いに行けば、上記を問いかけてきた。いつもより、低く険しくどこか大人しい声で、俺に小さく囁いてきた。俺は、何かしら勘づいてはその勘を信用する人間だった。 もちろん、論理的に、合理的に考えることも多々ある。だが、稀に確定という言葉が出るほどの勘を嗅ぎとる。その勘というものに、反対や意義はなく、只それを信じることしか出来なかった。今回は、ほぼ、いや確実に当たっているだろう。あの男は安全だ。裏切ったり、俺たちを悪に招き入れたりすることはしないだろうと感じていた。
「多分、大丈夫だ。」
津美紀からの問いに、静かに答える。津美紀の顔を伺う気はなかった。それは、津美紀なら信じてくれるだろうと思っていたからだ。だが、当時の津美紀は、警戒心が限界以上に達していた為、信じる信じないより先に、自らの感情を優先し俺を否定した。
「恵はいつもそうだよね。多分多分って。本当かもわからないことをズカズカと__」
津美紀が全てを吐き出しそうになった時、男がドアを引く音を立てながら、俺達の傍に戻ってきた。
「…….実は、ショートケーキ買ってきたんだよな!」
男は少々乱暴な喋り方で、顔にくしゃと皺を寄せて笑った。
「ありがたいですけど、知らない人からものは貰えません。」
津美紀は、上機嫌な男の機嫌を落とすように冷たく応答する。
男は少し険しい表情になった。俺を初めて見た時の顔と同じだった。少し咳払いをしては、
「じゃあ…家族になろう。いや、初対面で家族はちょっとはえーか。んー、友達?になろーぜ。」
急に何を言い出したのかと思えば、家族になろうだとか友達になろうだとか、有耶無耶で曖昧なものだった。だが、どこか胸の奥を擽るような感覚がした。顔の覚えていない父と母、俺達を置いて出ていった津美紀の母親。俺達と関わった大人達は、どこかへ行ってしまう。もう俺達は、誰とも親密な関係を抱けないのだろう。津美紀も俺もそのような話題を出さないだけで、心の中ではそう思っていたのだ。そんな俺達の当たり前に、侵入者が来た。それがこの男、五条悟と言うやつだ。初対面だし、どこの人かも分からないのに、家族や友達になるなど到底無理なことだと思う。だが、男の顔を見れば、決して高校生には見えず、どこか小さな子供の様だった。
「…あなたを完全に信用した訳でもないし、受け入れた訳でもないです。だけど、ケーキは食べます。」
津美紀は、少しだけ心を開いたように見えた。きっと、心の中できつく締められた紐を少しの笑顔で解かれたのだろう。
「!!」
「そうだな、毎年買ってきてやるから、一緒に食べよーぜ。」
男は先程の笑顔よりももっと愛らしく、そして美しい笑顔を見せた。
正直、俺はあの甘いショートケーキが好きではなかった。だが、甘すぎるケーキも、子供のような五条先生の顔も、少しずつ解けていく津美紀の心も、全部毎年の楽しみだった。
「なんで、俺だけ1人で食べてんだよ。」
今年のケーキは少し、しょっぱい味がした。
END