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「黄瀬さん!こんにちは!どうかしましたか……?」
○○のその屈託のない笑顔に僕はやられる。
(どうしてそんな顔で笑うの?)
僕が嫉妬に駆られてるなんて、彼女は知る由もないのだろう。
(莉犬に言わなければよかったかな……?)
僕はふと考え込む。
「黄瀬さん……?」
心配そうに覗き込む○○の顔を見て、僕は慌てて謝る。
「ご、ごめんなさい!えっとその……、実は莉犬に夢野さんのことお話したら会いたいって言われて……!ね!莉犬!」
僕は莉犬に話しかける。莉犬はやっと俺の存在思い出した?とでも言うように呆れた顔で僕を見た。
「初めまして〜!赤井莉犬って言います!気軽に莉犬って呼んでね〜!」
フレンドリーな莉犬はすぐに○○と打ち解けそうだった。
「初めまして、莉犬さん!私は夢野○○です。よろしくお願いします!」
「硬いな〜!莉犬くんって呼んで欲しいな♡」
僕は莉犬の発言に胸がチクッとした。
(まだ僕だって、下の名前で呼んで貰えてないのに……。)
「り、莉犬……くん、?」
「うん!なぁに?」
○○は少し顔を赤らめる。もしかして好き、になっちゃったのかな?莉犬のこと……。それとも慣れていないだけ?僕はモヤモヤする。その時、○○の後ろにいた女の子が口を開いた。
「どうも!斎藤葉月です!!葉月って呼んでね〜!○○とは生まれた時からの幼なじみ兼親友なんだ〜!よろしくね!」
「噂の○○ちゃんと葉月ちゃんに会えてよかった〜!」
さすが莉犬と言うべきか……。もう2人と仲良くなっていた。っていうか噂って何?
「噂……ですか?葉月知ってる、?」
○○も知らないようだった。悩む姿すら愛おしいと感じるなんて、重症なのかもしれないな、僕。
「あ〜!○○のなら知ってるよ?伝説の美少女!高嶺の花!あの夢野財閥の一人娘がうちの学校に来たってちょ〜大盛り上がり。皆、○○を見せ物のように扱うから腹たって威嚇したけど」
「威嚇ってもう!!葉月?!」
「○○ごめんって〜!」
「あははははっ!○○ちゃんも葉月ちゃんも面白いね!笑」
「「おもしろくない!」」
「ハモるなんてさすが幼なじみ〜!」
○○も莉犬も斎藤さんも。僕を除け者にして、3人で楽しうそうだ。やっぱり、莉犬に紹介なんてしなければ……。なんて嫉妬に駆られる。
「黄瀬さん!黄瀬さんは噂って知ってますか?」
急に名前を呼ばれて僕はびっくりする。
「へ!?あっ、ごめんなさい。僕噂とかあんまり聞かなくて……。」
「そうなんですね!じゃあなんでしょ〜?莉犬くん答えを教えてください!」
「正解はね、超絶美少女、運動部のエース!この子が入れば全国大会も夢じゃない!?って言われてる天才斎藤葉月がうちに来た!?って噂だよ!本当に先輩たちに人気みたいだね〜!」
「お陰様で休む場所が家のみです……」
「あははっ!笑」
莉犬の笑い声を聞く度に、僕は何故ここにいるのかと感じてしまった。3人で十分なら僕は……?僕は、トモダチでは無いのだろうか……。そんな時だった。
「黄瀬さん!莉犬くんのこと、連れてきてくれてありがとうございました!葉月、すっごく嬉しそう……」
急に耳元で呟かれ、僕は少し耳をあからめる。
「あのさ……!僕達、トモダチ……だよね?」
僕は不安になって思わず尋ねる。
「ち、違かったのでしょうか!?私、オトモダチが今まで葉月しかいなかったからよく分からなくて……!オトモダチじゃありませんでしたか……?」
ちょっと涙目で上目遣いはずるいと思う……。
「オトモダチだよ」
僕がそう言うと、嬉しそうな顔をして笑う。
「それならさ……僕のこと、下の名前で呼んでくれない?るぅとって呼び捨てで。」
「るぅと……ですか?呼び捨ては慣れてませんが頑張ります!」
その笑顔は太陽みたいで少し眩しい。後ろで、斎藤さんと莉犬が温かい目で見てた気がしたけれど、それは気のせいだと思うことにした。
「黄瀬さん!じゃなかった……るぅと、!今から一緒にお昼、食べませんか?時間もあと半分ぐらいしかないけれど……!笑」
その笑顔に僕は返事をする。今は、トモダチかもしれない。けれど……
(いつか、この笑顔が僕だけのものになればいいのに。)
僕は心の中でそう願った。