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第二十三話 春を待つ時間
「待っている時間ほど、大切なものに気づかされる。」
二月の終わり。
校庭の桜の木は、まだ眠ったままだった。
でも。
枝の先には、小さな変化が見え始めていた。
春は、もうすぐそこまで来ている。
「一年って早いね。」
昼休み。
美桜が窓の外を見ながら言った。
「去年の今頃、こんな関係になると思わなかった。」
蓮が笑う。
「確かに。」
湊も思う。
一年前。
自分は誰かと
こんなに深く関わるなんて考えていなかった。
でも今。
隣には大切な人がいる。
*
放課後。
写真部の部室。
湊は一枚の写真を見ていた。
春の桜。
初めて紬を撮った日の写真。
まだ距離があった頃。
今見ると、不思議な気持ちになる。
「懐かしいね。」
紬が隣に座る。
「うん。」
「この時の私。」
写真を見る。
「まだ写真を見るの、少し怖かった。」
湊は頷く。
「でも。」
紬は続ける。
「この写真があったから。」
「また撮りたいって思えた。」
湊は少し笑う。
「よかった。」
「うん。」
*
数日後。
紬の海外留学の結果が届いた。
放課後。
#元カレ
まぁ
15,183
#nagiコン🐈⬛🩷
りー
251
latte
699
#学園
大正
5,257
四人で集まっていた。
「どうだった?」
美桜が聞く。
紬は封筒を握っている。
少し緊張した顔。
そして。
「……決まった。」
静かな声。
「行けることになった。」
一瞬。
誰も話さなかった。
その後。
「おめでとう!」
美桜が笑顔になる。
蓮も頷く。
「すごいじゃん。」
湊も笑った。
「おめでとう。」
心からそう思った。
でも。
胸の奥に、小さな寂しさがあった。
*
帰り道。
湊と紬は二人だった。
「みんな、喜んでくれたね。」
紬が言う。
「うん。」
「嬉しい。」
「でも。」
少し間。
「寂しい?」
湊は驚く。
「……。」
紬は笑った。
「分かるよ。」
「私もだから。」
その言葉に、湊は顔を上げる。
「朝比奈も?」
「うん。」
「楽しみ。」
「でも。」
「今までみたいに会えなくなるのは寂しい。」
初めて。
二人は同じ気持ちを口にした。
*
駅前。
別れる時間。
紬が振り返る。
「神崎くん。」
「ん?」
「春になったら。」
「桜、また撮ってほしい。」
湊は少し笑った。
「もちろん。」
「約束。」
「うん。」
でも。
その約束には。
去年とは違う意味があった。
去年は。
ただ一緒に見る約束だった。
今は。
離れる前に残したい時間だった。
*
夜。
湊はカメラを手に取る。
写真フォルダを見る。
春。
夏。
秋。
冬。
一年分の思い出。
その最後に。
まだ撮っていない写真がある。
春の桜。
そして。
その前に伝えたいこと。
湊はまだ言葉にできない。
でも。
もう気づいていた。
紬は、自分にとって。
ただの大切な友達ではない。
📷 Photo.023『春を待つ約束』
撮影日:2月28日
春は、新しい始まり。
でも同時に、
何かが変わる季節でもある。
コメント
4件
いえいえー! そうなんですよ、、 湊はそこで悩んで悩んででもやっぱり紬を応援したい気持ちが勝ったんでしょうね! だから心からおめでとうっていえたんでしょうね! 多分湊の中でもう答え出てると思います! きっとくると思いますよー! 時間はかかるかもですけどー! わ!ありがとうございます! めっちゃ嬉しいです! これからも見守っていただけるととても嬉しいです☺️
第23話、読み終わりました……。 「待っている時間ほど、大切なものに気づかされる」ってタイトルからもう沁みますね。紬の留学が決まって、みんなでおめでとうって言い合うシーン、湊くんの胸の奥の寂しさがすごく伝わってきました。最後の「春の桜を撮る約束」、去年とは違う意味になるってところが切なくて……。まだ言葉にできない気持ち、私も湊くんと一緒に待ってます。春が来るのが、怖くて、でも楽しみ。