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第二十四話 最後の春休み
「終わりが近づくほど、何気ない時間が宝物になる。」
三月。
校庭の桜は、まだ満開にはなっていなかった。
でも。
少しずつ膨らんだ蕾が、春の訪れを知らせていた。
「もうすぐ卒業か。」
蓮が空を見上げる。
「早すぎない?」
美桜が笑う。
「一年、本当にあっという間だったね。」
湊は静かに頷いた。
春。
桜の下で始まった関係。
夏。
海や祭りで笑った時間。
秋。
文化祭で残した思い出。
冬。
未来について話した時間。
全部が昨日のことみたいだった。
*
春休みに入る前。
四人で最後の思い出を作ることになった。
行き先は、最初に紬を撮った場所。
あの桜並木。
「ここ、懐かしいね。」
紬が言う。
湊はカメラを見る。
「一年ぶり。」
「そうだね。」
あの日。
紬は写真を見ることが怖かった。
でも今。
自分からカメラの前に立っている。
その変化が嬉しかった。
*
四人で歩く。
蓮と美桜は少し先を歩いている。
「なあ。」
蓮が小声で言う。
「もう言うんじゃない?」
「何を?」
美桜が聞く。
「神崎の気持ち。」
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美桜は少し笑う。
「やっぱり気づいてた?」
「そりゃ分かる。」
「本人以外。」
「それ言うな。」
二人は笑った。
*
夕方。
少しだけ二人になる時間ができた。
桜並木の下。
まだ花は少ない。
でも。
風は少し暖かかった。
「神崎くん。」
紬が言う。
「一年って、不思議だね。」
「うん。」
「最初は、こんなに誰かと一緒にいるなんて思わなかった。」
湊は笑う。
「俺も。」
「でも。」
紬は続ける。
「今は、この時間が当たり前になってる。」
その言葉を聞いて。
湊は思った。
当たり前じゃなくなる前に。
伝えたい。
*
「朝比奈。」
「ん?」
湊はカメラを握る。
いつもなら。
写真に気持ちを残していた。
でも。
今回は違う。
「俺。」
少し声が震える。
「朝比奈と出会えてよかったと思ってる。」
紬は黙って聞いている。
「写真を好きになれたことも。」
「笑えるようになったことも。」
「全部。」
「朝比奈がいたからだと思う。」
風が吹く。
桜の蕾が揺れる。
「だから。」
湊は続ける。
「これから離れても。」
「ずっと大切に思ってる。」
それは告白に近い言葉。
でも。
まだ「好き」とは言わなかった。
今の二人には、それで十分だった。
*
紬は少し俯いた。
そして。
「私も。」
小さな声。
「神崎くんに出会えてよかった。」
「写真を見るのが怖くなくなった。」
「未来を考えられるようになった。」
紬は笑う。
「ありがとう。」
湊も笑った。
*
帰る前。
湊はカメラを構える。
「撮ってもいい?」
紬は頷く。
「うん。」
シャッターを切る。
まだ咲いていない桜。
二人の笑顔。
春を待つ時間。
その一枚には。
別れではなく。
新しい始まりが写っていた。
📷 Photo.024『春を待つ二人』
撮影日:3月18日
桜はまだ咲いていなかった。
でも、
僕たちはもう春の中にいた。
コメント
4件
私もゆめかさんからコメント来てて、 飛びあがっちゃうぐらいすごく嬉しかったです! あ!ほんとですか!そうなんです!まだまだこれからなんですよ! まだここで終わられちゃ困りますー! 2人の距離もまだ咲いてないですし、、その意味も込めてみました🤭 そうなんですよ! 第一章でほんと2人とも成長しましたよね! お互いがお互いを支え合ってて、2人とも成長していってるのがすごく嬉しいです! はい楽しみに待っててくださーい! 応援ありがとうございます! もっと頑張れちゃいますー!🤭
あああ第24話…ッ!!タイトル「最後の夏休み」なのに本文は春で、そのギャップも含めてエモすぎる😭💕 湊が「好き」って言わずに「ずっと大切に思ってる」って伝えたところ、紬が「ありがとう」って笑顔で返したところ、もう胸がぎゅーってなったよ…!まだ咲いてない桜の下で、別れじゃなくて新しい始まりを写したラストの写真、めちゃくちゃ好きです。二人の距離感が一年かけて変わってきたのが伝わってきて、じんわり温かくなった。次も絶対読みます!🌸