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プロフィール
水原 弦之助(ミズハラ ゲンノスケ)
みんなからは弦と呼ばれる 同室➝英二郎
6年生の中で近距離 といえば弦と言われるほど近距離戦は弦が一歩飛び出している
相棒は刀
だがあまり戦闘は好きじゃない。なるべく争いは避けたい
キャラメーカー使用
プロフメーカー使用
八木英二郎(ヤギ エイジロウ)
六年い組 同室➝弦之助
⚠️オリキャラ 口調迷子 原作✘ 死ネタ
忍たま乱太郎 夢小説
満月が、やけに明るい夜だった。
「……ただいま」
誰に向けたでもない声が、六年生の長屋の廊下に落ちる。
戸を開けた水原弦之助の姿を見て、最初に息を呑んだのは伊作だった。
「……弦!?」
服は裂け、泥と――赤黒い色が混じっている。
それが返り血なのか、自分のものなのか、弦自身にも分かっていなかった。
「英二郎は!? 一緒じゃなかったのかよ」
小平太の声に、弦は一瞬だけ目を伏せる。
それだけで、答えは十分だった。
その夜、弦の部屋に灯りはつかなかった。
正確には、灯りをつける理由がなくなった。
それから、弦は笑わなくなった。
近距離戦では誰よりも前に出て、誰よりも敵を止める。
6年で一番近距離が強いのは誰かと問われると真っ先に名前が挙がるのが弦だ。 そんな評価は変わらないのに、どこかが決定的に違っていた。
「弦、飯行くぞ」
留三郎がいつもの調子で声をかけても、
「あー……わりぃ。今日はいい」
弦はそう言って、申し訳なさそうに目を逸らし、その場を離れる。
「……あいつ、謝るようなことしてねぇだろ」
文次郎がぽつりと呟く。
「でも、心は別だろうな」
仙蔵の静かな声に、誰も返事をしなかった。
満月の夜だけは、弦は部屋から出てこない。
六年生たちは、いつの間にかそれを暗黙の了解にしていた。
戸を叩く者も、声をかける者もいない。
——きっと、思い出してしまうのだ。
あの夜。
月明かりの下で、目の前から親友が消えた瞬間を。
「……ッ」
弦は布団の上で膝を抱え、背中を丸めていた。
体の古傷が疼くたび、心まで引きずられる。
視界に浮かぶのは、最後に見た英二郎の背中。
名前を呼ぶ暇もなく、伸ばした手は空を掴んだ。
「……英二…郎……」
声にならない声が、喉から零れる。
呼んでも、返事はないと分かっているのに。
呼ばずには、いられなかった。
布団を握る指が震える。
寒いわけじゃない。
それでも、体の奥が冷えていく。
——俺が前に出ていれば。
——俺が、強ければ。
何度も繰り返した後悔が、満月のたびに胸を締め付ける。
「……っ、う……」
小さな声が漏れ、弦はさらに身を縮めた。
誰にも見せない、誰にも聞かせない弱さ。
その部屋の向こうで、六年生たちはただ黙って夜を過ごす。
声をかければ、弦はきっと謝ってしまうから。
心配すれば、弦はもっと自分を責めるから。
だから今夜は、見守るだけ。
満月が沈むまで。
弦が、また一人で朝を迎えられるように。
そしていつか、
満月を見ても、痛みだけじゃなく——
隣にいた記憶を思い出せる日が来ることを、誰もが願っていた。