テラーノベル
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智之から見えない場所まで歩いてから、私は座り込んだ。今にも倒れそうになり、もう歩けない。
それに、こんな顔で電車に乗って、帰る元気も今はない。ちょっと落ち着かせなきゃ。
ボーっと海を見つめてから、美和と匠3人のグループメッセージに、
〈トモと終わった〉と送った。
すると、
〈え? 綾、どういうこと? 今どこ?〉と美和から返信が来て、
〈えー? どういうことだ?〉と匠からも返って来た。
そして、美和から電話が鳴って、匠も入って来たので3人で話すことになってしまった。
『綾? どういうこと? あんた今どこ?』と、
『そうだよ、何? お前今どこだよ?』と……
「あ〜〜海!」
『どこの?』
『どこだよ?』と同時に聞かれた。
「お台場かなあ〜」と言うと、
『なんで? デートじゃないの? 智之さんは?』と美和
「トモね〜先輩社員さんと結婚するかも〜」と言うと、
『はあ〜? 何? どういうこと?』と、怒りモードの美和
『は? なんだよ! それ!』と匠も怒っている。
『綾、落ち着いて最初から話せる?』と美和に促されてさっきの話をした。
そして、私は、さっき智之から言われたことを2人に話した。
匠は、スピーカーにして聞いているようだ。
『何よ、それ! ちょっと《《智之》》は? アイツぶん殴ってやる!』と言う美和
普段、智之《《さん》》と呼んでいたのに、怒りを露わにして、呼び捨てで怒っている。
それに、
『アイツ、最低だな……』とボソッと言う匠。
「でもね、トモも嵌められたんだと思う」と、私が庇うものだから、
『にしてもだよ、智之がやったことは、事実なんでしょ!』と美和
「動画撮られたって言ってるから、そうなんでしょうね」
『は? キモっ! 何その女! マジで怖っ! 何やってんのよ! 智之は! ったく……』と、本気で怒ってくれている美和。
そして、
『綾は、どうしたい?』と匠が聞いてくれた。
「そりゃあ、全てなかったことにして、昨日プロポーズされた時間に戻りたい!」と言うと、
『え? 昨日プロポーズされたの? 智之に?』と美和。
「うん。2人には、月曜日に報告しようと思ってたのになあ」
『はあ〜? ふざけやがって!』と更に口が悪くなり、怒ってくれている美和。
「酔ってたみたいだし……それに、トモもまさか子どもが出来てるなんて思ってなかったと思うから」と言うと、
『でも、ラブホで目覚めた事実まで隠して、なかったことにしてたんだよね?』
「うん、最低だよね。どうせ隠すなら一生そのまま隠しておいて欲しかった」
知らなくて良いことは、一生知りたくなかった。知らない方が幸せなこともある! と私は、思っていたのだ。
そう言うと又、涙が流れて来た。
終始、美和は、智之のことを『許せないし、あの女! もっと許せない!』と怒ってくれている。
「私ね、トモが私を裏切った時点で、もうあの|女《ひと》の元へ行くことが決まってたのかな? って思えて……。子どもがトモのことを引き寄せたのかなって。
昨日までは、何も知らなくて、プロポーズ、凄く嬉しくて、結婚するのを楽しみにしてたのに……。あ〜母に言っちゃった。何て話そう。
いっその事、このまま何も知らない方が良かったのに……。今日話を聞いて、軽蔑して一気に冷めちゃった」と言いながら、頬を涙が伝っていた。
『智之は、いつ裏切ったか言ったの?』と美和
「知らない! でも、お腹の子が3ヶ月とかなら、2ヶ月ぐらい前なんじゃないのかなあ?」
『そっか……』
気が付けば、美和と1時間近く話していた。
『綾、カラダ冷えたんじゃない? 大丈夫?』と聞いてくれた。
「あ、うん、私は大丈夫! 美和デートなんじゃ? 長い時間付き合わせてごめんね。ありがとうね」と言うと、
『ううん、今すぐ会いに行けなくてごめんね』と、言ってくれた。
すると、
「俺が来たから」と匠が言った。
電話の中と後ろから声がしたので振り向くと、
「え? 匠!」と驚いた。
『え? 急に喋らなくなったと思ったら、匠、そっちに向かってたの?』と美和
「おお、今着いた」と。
『じゃあ、ココは匠に任せるわ!』
「おお、任せとけ!」と言う匠。
「美和も匠もありがとうね」とお礼を言うと又涙が出て来た。
『ううん、じゃあ綾! また連絡するね! 匠よろしく頼んだよ』と。
「おお、じゃあな」
「美和ありがとう〜」
『うん、また連絡する』と、恐らく彼氏とのデートがあっただろうに、付き合ってくれていた。
それに、匠も……
「ありがとう」と、もう一度匠にもお礼を言うと、
「ううん」と言う匠。
2人は、私が寂しくないように、ずっと電話を繋いでくれていた。
もう私の顔は、泣き腫らしてボロボロになっていた。
「大丈夫? じゃ、ないよな。凄い顔になってる」と言う匠。
「え? 嘘!」と慌てて鏡を探す。
「ハハッ、大丈夫だよ」と笑っている。
そして、
「智之は?」と聞かれて、
「知らない」と言うと、辺りを探してくれたが、
「車で来た?」と聞かれたので、
「うん。車が駐車場になかったら、もう帰ったんじゃないのかなあ?」と言うと、
「普通さあ、車で彼女と来て、置いて帰るか?」と言う匠。
「私が、『もうトモの顔見ていたくない!』って言ったから」
「にしてもさあ……」と怪訝な顔をする匠。
「いいの、いいの、海見てる方が癒される」と、ジ〜っと、海を見つめる。
「でも、ずっとココに居たら冷えるだろう」
隣りに座って付き合ってくれる匠。
「ごめんね、こんな所まで」
「どうせ暇だったし」
「そうなの?」
「まあな」
でも、部屋着ではなく、きちんとした外出着だ。
どこから来てくれたんだろう。
「ごめん、どっか出かける所だったんじゃ?」と言うと、「いや」と否定する。
ジーッと匠の顔を見つめる。
「ん? 何だよ」と笑う。
「匠って、良く見たらモテそうなのにね〜」
「ブッ、良く見たらって失礼だな! 今まで知らなかったのかよ!」と笑っている。
「うん。ごめん」と笑う。
──智之のことばかり見てたからかなあ
「ハハッ」
「ホントに! どうして彼女が出来ないのかしらね〜?」と心配する。
「ハハッ、出来ないんじゃなくて、まだ作ってないだけ! 別にモテなくはない!」と言う。
「あ、やっぱそうなんだ! コレは失礼」と言うと、
「慎重に選択して、精査してる所だからな」と笑っている。
「ふ〜ん、そうなんだね。知らなかった〜」
「いや、マジだからな」と笑っている。
「そっかそっか」
いつも私たちの話を聞いてくれる匠。
そう言えば、ずっと彼女を作らないなと思っていたのだ。わりとイケメンなのに……
匠と居ると元気が出て来た。
でも、ふと思い出して、笑い泣きしてしまっていた。
「あ、ごめん」と笑いながら涙を拭くと、
「我慢するな! ココならいくらでも泣けるぞ」と言ってくれた。
すると、
「うん。ウッウッ、トモの馬鹿〜〜〜〜!」と、私は、泣きながら叫んだ。
「ハハッ、叫べとは言ってないけどな、まいいか」と笑っている匠。
「ん?」と泣顔で匠の方を見る。
「あ、いいよ、どうぞ」と、言ってくれた。
「じゃあ遠慮なく。トモの馬鹿野郎〜! もう勝手にしろ〜〜!」と言うと、
「ハハッ、なんか周りの人が俺の方を見るのは気のせいか?」と笑っている匠。
お昼を過ぎて、人が増えて来ていたのだ。
「あ、ごめん。ホントだね、匠のことだと思われるね」
「ま、いいけどさ」と笑ってくれている。
「あ、匠お昼ご飯は、食べたの?」と聞くと、
「あ〜ブランチ食べたよ」と、言ったが少し不自然だった。
「そっか、ごめんね」と思わず言った。
もしかして朝だけ食べてお昼は食べてないかな?と思ったからだ。
「謝るなって」
「うん。ハア〜〜」と大きな溜息を吐く。
「で、どうすんの?」と聞かれ、
「どうもこうも、鑑定結果が出たらトモが決めるんじゃない? もう私は考える気力すらないよ」と言うと、
「綾は、智之じゃなくても良いのか?」と匠に聞かれた。
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