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【フランス・パリ・聖セントメアリー国際バイリンガルスクール】
むすっとした顔で向かいに座っている少女を眺めて、伊藤アリスはやりきれないというように首を振った
いったい世の中はどうなっているのかしら?この少女が言うには18歳で、バージンが普通じゃないなんて
学年最終日の午後5時30分・・・・音楽教員でもあり、スクールカウンセラーでもあるアリス。今は相談にきた生徒に
残っている忍耐力をかき集めて言った
「ねぇ・・・ミス・フィジー?あなたの年齢で経験していないのは、決して恥ずかしいことではありませんよ。若くて未熟なうちはセックスに危険が伴う可能性もあるから、そんなに焦って経験しないほうが賢明だと私は思いますよ」
目の前の女学生が唇を尖らせてアリスを睨む、金髪に緑色の瞳を不満そうにこちらに向けている。着ている制服の白の詰襟に紺色のフレアスカートは
アリスが在学中と変わらずで、ここに預けられている生徒はみんな良家の娘だ
その大事な親御さんから預かっている生徒に、アリスは精一杯教員らしく、規律正しく見えるように胸を張って言った
「あなたが彼をとても愛しているのはわかりました。でもせめて卒業まで待てない?春休みが終わればあなたは最高学年生でしょ?」
そもそもそれが問題の一端ではないかとアリスは睨んでいた
学期が変わるこの数か月は最終学年にもなると、受験のストレスもあって、毎年この時期になるとはめをはずしたがる生徒がいるのだ
アリス達ももちろんいつの時代もそうだった
卒業式があるこの時期にはあちこちで、学年最後のパーティーが行われている
そこでは就学を終えたという解放感に酒やドラッグが付いて回るのだ
アリスは伊達メガネの奥からじっとフィジーを見つめた
少女達が初体験をしてしまうのもこの時期だ
しかしほとんどの少女は、偶然の成り行きでそうなるのだが、フィジ―の場合は自らの意思でその決断をしようとしてた
「いいですか?フィジー・・・あなたはそのボーイフレンドを愛していると思っているのでしょう?でもあなた達の年代の恋愛は、滅多に長続きしないものなの。ほんの数か月したら・・・新しい彼氏が出来ているかもしれないわよ、そしてまた別の人を好きになって・・・・その度に相手と深い関係になっていたら・・・ 」
アリスが説得すればするほど、ソバカスの少女は眉間にシワを寄せてアリスを睨む
「でも・・・アリス先生・・・私エドワードを愛してなんかいません 」
アリスに挑むような目で打ち消されてアリスはたじろいだ。さらに少女が続ける
「私・・・初体験がどんなものか知りたいだけなんです・・・アリス先生だって・・・クラスのみんなも・・・私以外は全員経験済みよ 」
そうなの?
アリスは目を見開いて驚いた
「みんながみんな、そんなことをしてるわけないでしょう!」
アリスは少し赤くなって言った。ムキになっていると思われないといいんだけど
目に涙をためて少女はアリスに訴えた、白の詰襟に紺色のワンピースの制服から、のぞいている素足が若さを語っている、アリスの歳で素足なんてありえない
「そんなこと言ったってアリス先生もやってるはずだわ!恋人だってわんさといたに決まっている!」
頬がますます赤くなる。アリスは断固とした口調で人さし指をかざして言った
「いいこと!お嬢さん!私の話は関係ありません!第一私は25歳で18歳ではありません!もちろん18歳の頃は私はバージンでした!本当よ! 」
―そして今もね―
頭のどこかで意地悪な声がささやきかける。おもわず余計な考えを脇にやってコホンッと一つ咳をする
「スクールカウンセラーとして忠告しておきます。どうしても経験したいっていうのなら、せめてそのエドワードと恋人同士になるまで待つのね!
そういうことはいくら男の子が誘ってきても実験的に試すものではありません!それは心から愛し合った者だけが許される特別のものです!忘れられない思い出になるような・・・・後悔なんてしないようなものよ・・・ 」
言いながらアリスは、この少女を説得できないことを悟っていた。その証拠にフィジーはふてくされてアリスと視線を合わせようともしない
ブツブツ・・・・
「・・・・ジェシカはアリス先生だったらもの分かりがいいって・・・きっと私達生徒の味方になってくれるはずだって言ってたのに・・・ 」
「好き放題に男遊びをしろって言うのが話がわかるってことですか? 」
アリスは凄んで鋭く切り返した
「そうじゃないけど・・・・18歳にもなってセックスの事を何も知らないって遅れててダサいわ・・・ 」
アリスはため息をついた。個人的にはロマンチストで理想を求めているかもしれないが、仕事の上ではいくら臨時教員だからと言って、現実主義者にならざるを得ない