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東京都のとあるビル、ここには今幕の主人公である佐々木星花(ささきせいか)がプロゲーマー育成監督として勤めている。
今日も今日とて後輩達がゲームの訓練をしている。ライバルに負けぬようにと
努力を惜しみ無く続けている。あ、どうも星花です。
今、俺が何をしているかって?学校の講師さながらの表情で後輩を
指導している、その真最中だ。いつも思うのだが、後輩達はよく飽きずに
訓練を続けていられるな、俺ならばもうとっくのとうに面倒になって
やめるね。すると、後輩の一人が俺に話しかけてきた。
「監督、俺と一勝負しませんか?」
俺が不思議そうな顔をしているのに気付いたのか、もう一言付け加えた。
「えっと、その、失礼かもしれないですけど、暇そうな顔してたものでつい」
気まずそうな後輩の顔を見ながら俺は、少し嬉しさを感じつつも断った。
決して相手にならないから、とかそういう理由では無い。俺とやっても
後輩達の時間の無駄になるだけだからだ。そして、気まずさと共に、1日は
過ぎていった。家に帰りスマホを見ると、弟から電話が来ていることに
気がついた。急に弟の声が聞きたくなって、電話をした。
ついでに1ヶ月に一回必ず連絡するという決まりを果す為でもあった。
子供の約束ごとの様に感じるかもしれない。だが、弟は外国に住んでいて
何か遭ってもすぐには日本には来ることが出来ない。そのため、事故やら
病気になっても心配と言うことで、1ヶ月に一回連絡すると言う
ルールが出来たのだ。電話をかけると弟がすぐに出て、話が始まった。
俺と弟は幼い頃から仲が良くよく遊んだものだ。そんな事を思い出していて
上の空で返事をしていると弟に気付いたのか弟が怒った。
「兄ちゃん!僕の話ちゃんと聞いてよ、上の空で返事しないでよ!?」
その声で思い出に浸っていた俺を、意識の海から現実に引き戻す様に、
鋭い狼のような声が聞こえた。弟を、怒らせると怖い事を知っている俺は 慌てて謝った。
「すまねえ、昔の事が突然頭に浮かんできたもんでついボーッとしてよ。」
すると、弟は気を使ったのか、昔の思い出話に話題を変えた。
「そうなの?そうだ!久しぶりに思い出話しようよ!」
そして弟と思い出話に花を咲かせた。
今から十五年前のことだ、俺が五歳の時に弟は生まれた。そのときは、
弟が出来たと言う実感は無かった。それから五年たった頃親は離婚した。
理由は俺の事だった。俺が十歳になったときに常人よりも飛び抜けたゲームの
才能、いや観察力、分析力の才能が開花した。その才能を伸ばすために、
日本に残って才能を伸ばすか、それとも外国に行くか、両親は口論になった。
そして最後は、離婚にまで発展した。弟は父に引き取られ外国へ
(俺と同じで弟にも才能があったため)、俺は母に引き取られ日本に残った。
だがその選択が間違っていた。父と別れたその日から母はおかしくなった。
まあ昔話はこの辺にして話を戻そう。弟とは楽しい思い出を語り合った。
それから九時ぐらいに、弟から明日も仕事があるからと電話を終えた。
その後、俺も明日は仕事があったためすぐに寝た。
現在深夜零時、いわば丑三つ時と言うやつだ。
俺は不意に目が覚めた、いつも目が覚めると俺は、時計で時間の確認をする。そして、時計が示す時間は7時だ。
{うん、7時?へ、7時!嘘だろ、もう出勤の時間なのか寝すぎた!}
俺はベッドから飛び起き窓のカーテンを開けた。だが、空にはまだ
日すらも昇っていなかった。どうやら時計が止まっていたようだ。そして、
窓から離れようとした。だが、金縛りにでも遭ったかのように、
体が動かなくなっていた。(まあ、金縛りになんか遭ったこと無いけど)
俺はどうすることも出来ず、ただただ外を見ていた。外を長時間見ていると、
ふと気付いた。それは、外は暗く月も昇らず、星さえ瞬かぬ、
ただ飲み込まれそうなほど暗い闇が広がっていた、ということだ。
そんな思考が浮かぶと、不思議と本当に飲まれるのではう考えが
生まれてしまった。いや、これは本当に飲まれるのかもしれない。
今にも暗闇から手が現れ手招きをする。そして俺が拒めば、連れ去られて
しまいそうだ。そんな恐怖に駆られながら、外を見ていると、
パソコンから通知が来た。けたたましい音が聞こえた。俺は、集中すると周りのことに、気が付かなくなってしまうので、通知の音を大きくしているのだ。
普段は五月蝿いだけだか、今回は助かった。パソコンの通知を合図に金縛りは解けた。もうこうなったら寝て忘れようとベッドに潜ったのだが、
寝られなかった。余程さっきの出来事が衝撃的で眠気が吹き飛んだようだ。
こうなっては、眠れそうにもない。ここで、普通の人であれば朝まで読書や、
眠気が来るまでボーッとするだろう。だが、俺の脳はゲームをする。
と言う行動を提示した。(これが、ゲーム中毒と言うやつである)そういえば、
パソコンに通知が来ていたな、せっかくだから確認するか。確認すると、
新作RPGゲームの様だ。暇潰しには、ちょうどいい。早速やってみるか。
ゲームをダウンロードしてログインすると、なにやら文字が提示された。画面には、貴方は異世界の勇者様に選ばれました。そして、貴方は今から
異世界に行きます。準備が完了しましたらOKをタップしてください。
俺は、感心していた。ここまで雰囲気を作るのはなかなか手が込んでいる。
ここまで手が込んでいるのだ、きっとストーリーや、ゲームも良く出来て
いるのだろうな、なんて期待に胸を膨らませながら、OKをタップした。
すると、眩い光が俺を包み込んだ。
光がひくとそこには不可思議な空間が広がっていた。まるで、宇宙のような空間だ、肉眼で惑星なんかも確認できる。
(もしやこれは最近噂の、勝手に仮想空間に連れ込まれるやつか?)
どういうことかと言うと、最近都市伝説が出てきた。その都市伝説には夜に、パソコンやゲーム機などの電子端末を使っていると、なぜか仮想空間に連れ込まれると言う都市伝説だ。あまりにも、都市伝説が広まりすぎて、
最近なんかじゃ専門家や、テレビキャスターなども騒いでいる。話題の話だ
専門家が言うには、ただの噂だとか。テレビキャスターは、国の陰謀だとか、
話のネタは、この都市伝説で持ちっきりだ。
とにかく今俺は、この都市伝説に遭っているということだ。
少し、調べることにした。この都市伝説は、俺自身気にはなっていた。
一体誰が、こんな下らない噂か、行動をしているのか。すごく気にはなる。
なのでここで一つ、鉄板ネタをやってみよう。
「おい、俺になんのようだ。こんなことして、一体何が目的だ!」
まあ、良くあるドラマやアニメの台詞だ。言ってみたかっただけの、
考えもあるが一番手っ取り早かったのがこの台詞だった。
だが、返事はいつまでも来ない。ただ俺が発した声がこだまするばかりだ。
少しすると、声が帰って来た。
「まあまあ、そんなに怒らないでください。疲れるだけですよ?」
そんな、悪意の無い透き通った声が聞こえた。
(別に、怒っている訳じゃ無いんだが。ただの演技だし。)
声の主は、姿を見せた。見た目はRPGゲームに良くある僧侶のような見た目で
顔立ちも良く、少しみただけで礼儀がなっているやつに見える。
なんだか、俺との差を感じる。俺は、目の下にくまがあり、髪はボサボサで
でも、不健康には見えないと、後輩に言われたことがある。ちなみに、
弟も同じことを言っていた。そんな、俺の前に現れる美青年。
(嫌味かな?)
美青年は俺を見ると、不思議そうな顔をしている
「あれ?驚かないの珍しい。普通なら驚くけど。どうやら貴方は特別らしい」
(おう、その通り。俺は、ひねくれてるからな。)
青年は、はっとした顔をすると、慌てて自己紹介を始めた。
「そうだ、自己紹介がまだだったね。僕は、異世界の案内人「R」だよ。」
相手が自己紹介したのにこっちが返さないのも失礼だと思った俺は、
自己紹介をした。
するとRは、何度かうなずくと俺の前に、キャラメイク画面を出した。
どうやら、これで見た目を変えろと言うことらしい。面倒だったので、
てきとうに決めておいた。決め終わるとRに足場があろう場所から、
隅に寄せられた。何をするのかとみていると、突然Rは勢い良く突っ込んできた
その反動で俺は落ちた。どうやらここで終わりらしい。
現在、異世界の魔王城にて。
けたたましい、音が人の気配の無い城内に響き渡る。すると、大きな扉の前でその足音はピタリと停止した。そして、扉を開け放つ重々しい音が廊下に響く
部屋には玉座があり、玉座にはひとがたのスライムが座っていた。
「魔王ウーズ様!大変です。人々がまた勇者を召喚しようとしています。」
緑のひとがたスライムは、伏せながらおどおどしている。
そしてウーズは、迷惑そうに緑のスライムを見下ろし睨んでいる。
「五月蝿いぞ、ラムよ。少しは、静かにしていてくれ。」
ラムは、ウーズの顔を恐る恐る覗くとすぐに地に目線を移した。
それを見たウーズはため息を一つすると、腕を宙に上げ、指を鳴らした。
すると、ウーズの指先から、黒い霧のような物が出てきた。
霧は、窓の隙間から抜け外に出ていった。ラムは、不思議そうな顔をしていた
「ラムよ、今のことは初めてだったな。今説明してやる。」
「ウーズ」それは感染症の病名、そして病魔の魔王の名前。
感染症ウーズそれは、魔物以外の生命すべてに感染する病。感染すると、
皮膚が溶け流れ落ち、そこから、血が滲み出るというものだ。
治すことも難しく、不治の病とも言われるほどである。その治療法は、
治癒竜と言う治癒に特化した竜の鱗粉が必要になる。だが、その鱗粉の入手は
極めて難度なものだ。だがこれ以外にも、治療法はある。
それは、魔王を倒すことだ。そんな、難題のみの治療法だったため、不治の病といわれるのである。そして、この感染症を発生させているのが、
病魔の魔王である。この、魔王は当初には名前が無かった魔王だった。だが、この感染症を流行らせると、感染症と同じ名前がつけられたそうだ。
そしてウーズこの意味は、血や液体が滲み出る。流れ出ると言う意味だ。
ラムは、ウーズの説明を聞き終わると、納得の表情で何度もうなずいた。
ラムの目は希望に満ち、溢れていた。
目が覚めると、俺は知らない場所で寝かされていた。みた感じ何処かの地下室のように見える。誰かがここまで、運んでくれたのだろうか?
すると部屋の扉が開き、女の人が入ってきた。女の人は、俺を見るなり
目を輝かせ先程までの暗い顔から明るい表情に変わった。
俺が困惑していると、女の人は慌てて俺の前に来ると、
今までの経緯の説明をしてくれた。
彼女の話によると俺は教会に住んでいる、光聖の魔法使いによって召喚された
だが、召喚された時には俺は気を失っていて、心配した光聖の魔法使いが、
弟子を呼んで教会の地下にある、医療室に運ばせたそうだ。
なぜ医療室が地下にあるかって、俺も気になって聞いてみたところ、魔王から隠れて治療するには、ここが一番いいからだそうだ。まあ、納得だな。
そして、何の召喚で俺は呼ばれたのかと言うと、勇者の召喚だったらしい。
だが、そのあげく勇者では無いような見た目の俺が召喚されたらしい。
そりゃそうだ、勇者に見えないのも当たり前。
だって俺は今科学者の格好をしているから~!
他にも気になった事があった。なぜ、勇者を召喚しているのか、
なぜ勇者に見えない俺を運んで、面倒を見てくれたのか。
聞いてみると、驚きの答えが帰って来た。
悲しそうな顔をしながら、彼女は事を教えてくれた。
「えっと、ご質問に答えますね。なぜ、勇者様では無いような見た目の貴方を
介護したかと言いますと貴方は見た目から医者や、科学者のような見た目で
もしかしたら今流行りのウーズを、治すすべを知っているかもと
思ったからです。」
彼女はゆっくりと自分の腕を俺の前に出し、袖をめくると包帯が巻かれていた
彼女が腕から包帯を外すと、包帯の下の腕は見るも耐えないほどの肌が現れた
腕は、火傷でただれたような肌で所々は腐りかけ、医師では無い俺ですら
かなりの酷い状態だと言い切れるほどだった。
彼女は俺に優しく微笑むと、こんなの気味が悪いですよね、ごめんなさい
と言った。彼女は膝に手を乗たまま、涙を流し手を強く握っていた。
俺はそんな様子を見て、俺の母親を思い出した。父と別れた母は荒れ果て
前までは、美しかった髪はボサボサになり、昔の面影は一つもなかった。
そんな様子を見た当時の俺は、母を何とか元気付けようと勉強を頑張った。
そして、今の彼女の様子を見て俺は、母と重ねてしまっていたのかもしれない
そんなはずは無いのに、母では無いはずなのに、俺が昔、母親にやったように
優しく静かに、彼女に抱き付いてしまった。俺は、我に帰ると、急いで謝った
「失礼しました!えーとその、言い訳でしか無いんですけど、
昔の母に似ていたものでつい。本当に申し訳ないです。」
彼女は驚いた顔をしながらも、静かに微笑んでくれた。
「ふふ、面白い方ですね。それに優しい方。こんなに醜い姿なのに。なんだか嬉しいですね。」
俺は、恥ずかしさのあまり顔を赤くしていた。
「先程の質問早速お答え致します。なぜ、勇者様を呼び寄せるのか。」
彼女は、真剣な眼差しで俺を見つめると、静かに語り始めた。
俺は今森で迷っている、なぜ森にいるかって?彼女いやランセリアさんの
話によると、ランセリアさんの住む地域は魔王に支配されていてその、
魔王が感染症を広めているらしい。その、状態を打開すべく俺は決意を決めた
魔王を倒す事を、まあ話が通じれば感染症の流行りを止めてもらうことも
一つの選択である。そして、魔王城がある森に来たのだが進むにつれ、方角が解らなくなったのである。路頭に迷っていると、聞き覚えのある声が聞こえた
「おやおや、お困りのようですね、星花さん。」
俺は、少し苛立ちを覚えながら、答えた。
「誰のせいだと思ってるんだR」
声の主は、姿を見せた。Rは、腹立つ顔でニヤニヤしながら、
俺の顔を覗き込んでいる。一発殴ってやろうかな?
するとRは指を鳴らした。そして気づけば、何処かの城の中にいた。
(こいつ何をしたんだよ。)
Rは、ゆっくりと俺から離れるとこちらに振り向いた。
「魔王城までお連れしました。帰りは僕を読んでくだされば、
村の前までお連れしますのでいつでもお呼びください。」
そしてRはそれを言い残すと姿を消していた。ため息をつきつつも俺は、
Rに感謝していた。あのまま森をさ迷っていたら、確実に野垂れ死んでいた。
ランセリアさんに一つ約束をさせられていた。
『死なずに帰ってきてください。今貴方がこの村のいえ、この地域すべての
希望になるのですから。死なないでください。』
そうやって約束をさせられていた。しかも地域すべての希望なんて言われたら
死ぬわけにもいかない。面倒だが、やるしか無いのだ。
俺は、魔王城を進んだ。元凶となる魔王に会うために。
しばらく進むと、本のマークがある下げ札を見つけた。せっかくだここで少し
何か無いか見てみるか。入るとそこは、図書館のようだ。適当に本を取って
読んでみることにした。(読めないかも知れないけど)
その本の内容は、驚きのものだった。要約するとこうだ。
我々スライムは、古より人々から狩られる対象であった。だがある日
一人のスライムが立ち上がった。そのスライムは努力をし、スライム達を
まとめ守るほどの実力を持ち魔王へと昇格した。魔王となった暁に
そのスライムには、病魔の力が与えられた。そして人々に病を振りかざした。
だがスライム達からの反発が発生した。流行り病を発生させたのは良いが、
スライムがもっと狩られるようになってしまったと。すると魔王は、
スライム達を自らの城に招き入れ、かくまうようになった。時々勇者が来るが
魔王直々に、手を下し他のスライム達は隠し部屋へと避難をさせた。
そんな、内容だった。この話を聞くと、スライム達が勝手に逆恨みしている
だけに聞こえるが、実際は違うらしい。ランセリアさんによると、
昔はスライム達と共に共存をしていたらしい。だがある日四人の魔王が現れ
魔物は凶暴化したらしい。そのため人々は魔物を狩っていたそうだ。
だがスライムはその影響を受けず、共存を続けることができた。ところが、
ある日、騎士がやって来てスライムを狩り始めたそうだ。
だから、別にスライム達は悪くは無いらしい。
その話を聞いた俺は、スライム達との和解を決意した。そして今この本を見て
さらに強く思った。絶対に和解して見せると。足早に図書館を離れた俺は、
最上階へと急いだ。最上階に着くとそこには大きな扉があった。
勢い良く開け放つとそこには、玉座に座るひとがたのスライムがいた。
ひとがたのスライムは俺を見ると、ゆっくりと立ち上がった。
「よくぞ来たな勇者よ。私は、病魔の魔王ウーズだ。さあ、勇者よお前も
名乗れ数少ない、勇者として記憶しておいてやる。」
俺は、静かに答えた。
「俺は、佐々木星花だ。あんたと和解するためにここに来た。」
ウーズは、鼻で笑うと俺に鋭く冷たい視線を向けた。
「何が和解だ、この私を馬鹿にしているのか?さあ、武器を構えよ。」
俺は仕方なく、裾からスマホを出すとウーズと共に背景を撮った。
そして、世界の時間は止まる。俺の目の前にホログラムで出来たパソコンが
現れ宙に浮いている。俺は、すぐさま編集を始めた。
今、俺が何をしているのか分からない人も居ることだろう。今俺は転生時に
入手したスキル『編集者』を使用したのである。スキル『編集者』は、
撮影したと同時に、世界すべての時が停止し(時間に関するスキル能力も無効)
動画の編集を行う容量で相手のステータスや辺りに無かった物を
出現させる事が出来る。ただ編集が終わるまで、時は再び動かない。
このスキル、面倒くさいね。
まあとにかくだ、とりあえず死なないようなデバフでも付けとけ。
俺が付けたデバフは、鈍足、弱体化、だるさ、こんなのをつけてみた。
編集が完了すると時は再び動きだし、ウーズは地にひれ伏した。
ウーズは、ゆっくりと顔を上げると俺を睨み付けた。
「何をしたかは知らないが、この私をここまで追い詰めるとな、
これ以上は何も出来ない、私の敗けだ。」
するとウーズは、真剣な顔をすると立ち上がった。デバフをかけては、
いるもののさすが魔王だけはある。
「勇気ある人の子よ、一つ頼みがある。この城に住むスライム達には
手を出すな。私の頼みは、これだけだ。」
俺が縦に首を振ると、ウーズは、安心した顔をした。
「さあ、人の子よ。私に止めを刺すといい。いつまでも、
無様な姿を晒したくはないのだ」
俺は、そのあとすぐに止めを刺さずに、扉に向かい歩き始めた。
ウーズは、その背中に今出せる限りの声で怒鳴り付けた。
「人の子よ、戦いはまだ終わってはおらんぞ!逃げる気か?」
星花は振り替えると、優しく微笑んでいた。
「いや、逃げる訳じゃないさ。と言うかすでに決着は、ついているだろう?」
ウーズは反論しようとしたが、それを遮るように星花は言った。
「だって、お前は敗けを認めただろう?それに俺は、あんたを
倒しに来たんじゃない。あんたと、和解しに来たんだ。」
星花は続けた、自らの感じたことを、村の人々の思いを伝えるために。
気づけば、扉の空いた隙間からスライム達が覗いていた。どうやらウーズは、
よほど、スライム達から必要とされているのだろう。
話が終わるとウーズとはわだかまりは解れていたようだ。
俺は村に戻ると。村の人々にスライム達の事を伝えた。そしてウーズが、
感染症の治療を行う事を了承したということ。その事を知った村の人々は、
とても喜んでいた。そして、今夜は宴会騒ぎになった。
朝まで騒いでお祭り騒ぎ。でも俺だけは、その輪から外れて村の外れにいた。
まぶしい街の光を眺めながら一人、気づけばRが隣にいた。
「ねえ、みんなと話さないの?楽しそうだよ?君も混ざれば良いんじゃない」
俺は、ゆっくりと首を横に振った。
「そうですか、そろそろ帰るのにねまあ後悔だけはしないように気を付けて」
うん今なんて言った。帰る?嘘だろ。俺は転生したんじゃないのか。
いや待てよ俺はこの世界に来るとき死んのか?違う死んだ訳じゃねえ。
もしや、これは夢なのでは?それなら理屈がつく。そうだそうなんだ。
そうやって思い込みをしていると、ランセリアさんが声をかけてきた。
「あの、もしよければ少し話しませんか?」
ランセリアさんは少し恥ずかしそうに、でもにこやかに俺を見つめている。
「魔王ウーズについて聞きたいんです。貴方の知っている限りのことで
良いので教えてください。」
俺は、ランセリアさんに知っている限りのことを教えた。
魔王城の図書館で見た本の内容、ウーズがなぜ感染症を流行らせたのか、
俺はそれを伝えた。ランセリアさんは、静かに聞いていた。
そうやって、俺の考えも交えて話しているうちに、日が少しずつ少しずつ
登り始めた。その頃に話が終わった。終わると同時にRが再び姿を現した。
どうやら、夢の終わりは近いらしい。俺はランセリアさんに別れを告げると、
村から離れた場所まで来た。せっかくの雰囲気を壊したくはなかった。
だから、離れた場所まで来た。Rは、ゆっくりと俺を見ると、呪文を唱え始めた
「世界ヲ救ウ勇者ハ夜明ト共二消エル。時ハ満チタ勇者ノ帰ルベキ場所ヘト
戻シタマエ、次元ノ神ヨ」
そして、Rが呪文を唱え終わると足元に魔方陣が展開された。
眩い光が俺を包み込む。気がつくと、そこはいつもの部屋。どうやら、
夢は覚めたらしい。時刻は、朝の五時を指す。日が上っている。
まだ、夢見心地だが目が覚めたなら、やることをするしかない。
結局夢は夢なんだから。望んだって仕方ない。
今日も死にたいほどの毎日と、生きたいという恐怖によって俺は息をする。
それは、寿命の尽きるその時まで。