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<瞳>
「うん」
なんか涙が出そうだけど、ここで泣いたら止まらなくなりそうで踏ん張る
『甲斐くんにガツンと言ってやりなよ』
「うん」
『瞳ならもっと楽な恋ができると思うよ。仕事が出来てそれでいて可愛くて、歳だってまだまだイケてるんだから!それは私もだけどね』
「うん」
ダメだ、もう何かを言おうとすると絶対泣いちゃう。頷くだけでも体が震えてくる。
『それでも甲斐くんがいいんでしょ』
「う・・・ん」
声が震える。
『ここらで膿を出し切って、仕切り直しするしかないね。まだまだ膿も埃も出そうだけど』
「うんっ」
泣きそうなのにちょっと笑える。
里子との通話の最中にププププという着信を知らせる音が鳴る。
「電話来た」
『あと一踏ん張りだよ、頑張れ』
里子はそう言って通話を切った。
一瞬だけど疑ってごめん
てか
てか
ふと凌太への怒りの炎がぽっと着いた。
「元々凌太のストーカーだとしても手を出さなければ、ここまでこじれなかったんじゃないの!」
「マオの時だってそう!!」
「遊びで寝るとか女をナメてんじゃない!!!」
声に出して言うと少しだけスッキリした。と思ったら『ごめん』と手元から声が聞こえた。
知らぬ間に発信してしまっていた。
『あとでいくらでもお叱りを受けるよ。今、松本ふみ子の両親とセキュリティセンターに到着した。あと少し待っていてくれ』
「わかった」
リビングに移動するとローテーブルにスマホを置いてソファに横になった。
長い一日だった。
安心したら体の力が抜けて目を瞑ると音のないはずの部屋でキーンという音が頭の中に響く。
疲れすぎて耳鳴りがしている。