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ワトリーはふと疑問を抱いた。
「どうして、この封筒をサリーが持っていたのだ?」彼の視線は、手の中の羽根に注がれていた。
サリーは少し戸惑った表情で答えた。「楽屋に行ったとき、
シオンがこの封筒を持って震えていたの。だから、私が預かって捨てたのよ。
彼女は、噂がバレるかもしれないって怖がっていた。でも、
私はいつも通りにしていれば大丈夫って言って、安心させたの。」
ワトリーはその話を聞き、理解したように頷いた。「そうなのか…」
しかし、疑問は尽きない。ワトリーはさらに問いかけた。
「そのシオンのお客はどこにいるのだ?」
サリーは重い口調で答えた。
「名前は、バーナード・カールトン
キャットタウンでも有名な金持ちの猫よ。高級な地域に住んでいる資産家だわ。」
ワトリー「バーナード・カールトン」
シオンの死と、彼女を追い詰めた過去。その鍵を握る人物が、
バーナード・カールトンというオスなのかもしれない。
シオンはデビュー前にサリーと共に高級クラブで働いていた過去があり、
その頃からの客だったバーナードは彼女に執着していた。
シオンがストーカーに悩まされていたのは、周囲の猫たちも薄々知っていたようだ。
ポテトがジョセフに話しかける。
「みんな、シオンのことは良い子だって言ってますけど、過去のことも少しは知っていたみたいですね」
ジョセフが答えた。「おそらく、メイク担当のイザベラが口を滑らせてるんだ。
他の猫たちも『イザベラから聞いた』って言ってたからな」
ポテトが口元を押さえて笑う。「なるほど、イザベラだけに“べらべら”ですね」
「その通りだ」とジョセフがうなずき、ポテトは感心したように「さすがです、先輩」と返した。
ワトリーは二匹のやりとりをよそに、イザベラの行動が引っかかっていた。シオンの過去について、
あえて「言わないでほしい」としながらも噂を流しているイザベラ。その目的が見えないのが気になっていた。
シオンが噂を恐れていた理由は、高級クラブで働いていた過去だけではないのかもしれない――
その可能性がワトリーの頭をよぎった。シオンの怯えた様子や、イザベラの不可解な行動からも、
何か別の秘密が隠されている気がした。
(やはり、シオンが過去のことで何か大きなトラブルを抱えていた可能性が高いのだ。
それが彼女の命を奪う原因になったのかもしれない)と、ワトリーは考え込んだ。
噂を広めていたイザベラ、過去から彼女を追いかけていた
バーナード――彼らの間には何かつながりがあるのだろうか?
(とにかく、バーナードに話を聞くしかなさそうだ)と決心した
考えてるワトリーを見てジョセフが横から口を挟んだ。
「俺たちは一旦、署の方でシオンの検視結果を確認して、
防犯カメラの解析も進める。ワトリー、お前も少し休めよ。」
だが、ワトリーは首を横に振った。「いやなのだ、エイミーはまだ行方が分からないのだ。
シオンの死の真相を突き止めれば、何か手がかりが得られるかもしれないのだ。」
ジョセフは心配そうに眉を寄せた。
「ワトリー、だけどフェリックスも今はここにいないんだ。お前一匹でそんなこと、できるのか?」
ワトリーは真剣な顔で応じた。「フェリスは関係ないのだ。ボクは、エイミーが心配なのだ。」
ジョセフは眉をひそめて「それでこれからどうするんだ?」
「バーナードに会ってくるのだ」とワトリーは決意を固めて答える。
「バーナードに?そうか、気をつけてな」とジョセフはそっけなく返した。
ワトリーは少し緊張した様子で続けた。「ジョセフ、お願いがあるのだ。
イザベラとシオンの関係を調べてほしいのだ。」
「イザベラの?まあいいけど」とジョセフは一瞬考え込みながら答えた。
ワトリーは感謝の気持ちを込めて言った。「お願いするのだ。」
その言葉を残し、ワトリーは決意を胸に会場を後にした。カオリも静かにその後を追った。
ポテトは歩き去るワトリーとカオリの背中をじっと見つめ、不安そうに声を上げた。
「大丈夫でしょうか?」
ジョセフは肩をすくめて笑った。「資産家が、探偵を相手にするわけないだろ。」
ポテトは驚いた様子で返しす。「え!じゃあ、ボクたちも同行しましょう!」
ジョセフはため息をつきながら、腕を組んみ
「もういいだろ。署に戻って報告しなきゃだし、書類も山積みだ…フェリックスもいないし、無理だろ。」
それでもポテトは、「じゃあ、ボク行ってきます!」
ジョセフは眉を上げて驚いたが、すぐに小さく笑った。「そこまで言うなら仕方ない、行ってこい。」
ポテトは期待に満ちた目で見上げ「え、ここは先輩も一緒に来る流れじゃ?」
だが、ジョセフは背を向けて歩き出した。
「何を言ってる、俺は忙しいんだ。イザベラのことも調べないといけないしな」そう言って、
署の方へと帰っていった。遠くから「ちゃんと報告しろよ~」という声が響いた。
ポテトは急いでワトリーたちに追いつくために走り出した
ワトリー達はキャットタウンでも有名なセレブ地区に入っていた。
豪邸が並び、大きなマンションや高級車が道路脇にずらりと並んでいる。
そこに、バーナード家の大きな屋敷がそびえ立っていた。
玄関前に立ち、ワトリーがインターホンを鳴らすと、玄関のカメラが彼らを確認するために動き出した。
「何のご用でしょうか?」という声がスピーカーから響く。
ポテトが前に出て、元気よく言った。「警察のものです。バーナードさんはいらっしゃいますか?」
しばらくして、冷たい声が返ってきた。「旦那様は不在ですのでお帰りください。」
ポテトは少し焦りながら「えーっと、何時ごろ…」と尋ねようとしたが、その途端、通話がぷつりと切れてしまった。
ポテトは不満げにため息をつき、「警察が来てるのに、この対応はないよな。」とぼやいた。
ワトリーは冷静に、「待つしかないのだ。」と言いながら、玄関前から離れようとした。
そのとき、玄関の複数のカメラが、カオリをじっと捉えていることに気づく。
ポテトも異変を感じ、「なんか、じっと見られてる?」と不安げな様子だった
ワトリーはすぐに気づき、カオリの手を取り、「カオリ、ここから離れよう。」
だがその瞬間、玄関のドアがガチャリと音を立てて開き、中からメイドが現れた
彼女は無表情で、丁寧に「お入りください。」と言った。
ワトリーは一瞬迷ったが、「カオリ、今日は帰るのだ。」と言って、再び引き返そうとした。
しかしメイドは一歩前に進み、冷静な声で、「その方もご一緒に。」
カオリはワトリーの目を見つめ、ゆっくりと頷いた。ワトリーは迷いながらも、
カオリの手をしっかりと握り直し、「分かったのだ」
彼らはメイドの案内に従い、屋敷の中へと足を踏み入れた。
ポテトも少し不安げに後に続いた。重々しい扉が閉じる音が響く中、
彼らは静寂に包まれた屋敷の奥へと進んでいった。