テラーノベル
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夢を見た。
感覚が妙にリアルだったのを覚えている。
こんな夢を見てしまうほど、僕は貴方の事を好いているのだろう。
もう叶わないというのに。
全くもって諦める気になれない。
あぁ、一生夢が覚めなければよかったのに。
そう思いながら、朝食の準備をするこの時間がどれだけ憂鬱か。
貴方は知る由もないのだろう。
あぁ、なんだったっけ。
この夢を忘れたくなくて必死に思い出す。
そう…あれは月が綺麗な夜だった。
僕には貴方が何よりも美しく映って見えた。
僕の頬を撫でながら、愛おしそうに僕を見てくれるのが嬉しかった。
何度も体を重ねる夜に、溺死してしまうほど溺れて、このまま、 貴方とならどこまでも堕ちていける気がした。
…なんて気持ちの悪い夢だ。
身をよじらせ、こんなにも貴方を求めている自分に吐き気がした。
朝まで覚えていた綺麗な部分を覆い隠すように、汚い部分が脳を支配する。
うぅ、ぉえ、、
綺麗に思えた月も、今思えば薄気味悪い程輝いていた。
まるで、僕の恋を嘲笑っているかのように。
…もうやめだ、ここまでにしよう。
そう区切りをつけ、後味の悪い記憶に蓋をし、キッチンを後にした。
同時に、自分の気持ちにも硬い蓋を閉めてしまった。
その日は気分が悪くなるような曇り空だった。
いつまで経っても気分が晴れない、 僕の心を表しているつもりなのか?
僕の気持ちを晴らすよりも、その天気をどうにかしてくれ。
そう思いながら、いつもと変わらない道を歩いた。
…ついた場所は、貴方と僕の思い出の橋。
貴方になら全てを捧げれると誓ったはずの橋。
結局、そんなものは口だけで終わったけど。
僕はまだ諦めるつもりは無いのに。
橋の欄干の上に立つ。
あぁ、なんて気分がいいのだろう。
さっきまでの気持ちが嘘みたいだ。
これで終わりなんだ。
僕の気持ちも、いつまでも晴れない人生も。
Non mi stavi antipatico.
その夜の月は、気持ちの悪い程輝いていたそう。
𝑒𝑛𝑑
コメント
1件
なちに思いを寄せるいたぉーの話です。