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紗姫の住む市で〈市議会議員〉になるには、1000票あれば十分だ。
前回の選挙はトップ当選者が1568票で、19位の601票までが当選した。
信也の獲得票数は1497票で、当選順位は2位だった。
ところが〈衆議院議員〉になるには、桁違いの得票数が必要だ。
信也の場合、5つの市町が選挙区になる。広範囲の選挙活動が必要だ。
しかも当選者は1人だけ。
前回の選挙で勝ったのは、98423票獲得した大物議員だった。
選挙には「組織力(地盤)」「知名度(看板)」「資金力(鞄)」が必要だ。
普通のサラリーマン家庭で育った信也には、どれも無い。
あるのは自分の努力と能力だけだ。
信也は、大学在学中に司法試験に合格した。
睡眠時間を削って必死に勉強した結果だ。
卒業後は、故郷の法律事務所に勤務しながら、ボランティア活動をした。
河川掃除、防災訓練、緑化活動などに参加し、誰よりも機敏に働いた。
祭の準備や後片付け、盆踊りでは太鼓を叩いて盛り上げた。
婦人会、老人会、自治会に出向いて、市政の不満や要望を聞いた。
自分の行動や考えをアピールするためにSNSを活用した。
そんな信也を、先輩弁護士が建設会社社長に紹介してくれた。
小さな後援会が誕生して、26歳で市議会議員に初当選した。
議席は19席で、18番目の得票数だった。
信也は議会で活発に行動した。
駅前での『街頭演説』も定期的に行った。
有力者が有力者を紹介して、後援会が大きくなった。
32歳で 藩主の姫様 と結婚した。
「組織力(地盤)」「知名度(看板)」「資金力(鞄)」を手に入れた。
ここから快進撃が始まった。
前回の衆議院議員選挙で当選した大物議員が、次の選挙を勇退した。
党は、新人若手有望候補の信也を【公認】すると決めた。
信也は10万票を超える得票で、衆議院議員選挙に当選した。
紗姫は『衆議院議員の妻』になった。
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