《牛沢視点》
俺はgtさんが好きなんだと。
この間自覚してしまった。
他の誰よりも特別で、愛を向けてほしい人。
gtさんは俺の愛なんて要らないだろうけど
与えたい人。
そういう人だと知ってしまった。
だけど、そんな俺の感情は彼の生活では邪魔だから上手く蓋をして見えない場所に隠すことにする。
俺は昔から 自分を騙すのは得意なんだ。
人の感情を見て、距離を掴んで、楽しい空間をつくる。
これは昔に身につけてきた力。
今はこれだけが役に立つ。
gtさんが誰と仲良くしていようと俺は友達だから友達としての距離を。
gtさんとは撮影仲間だから踏み込む加減は周りに合わせて…。
それを常に意識して、「友達」というポジションを想像通りに確立させる。
それが俺のいつも通りなんだと飲み込んで、皆と楽しい友達間の空気をつくる。
辛くないかって…誰かにバレたことがある。けど、あれは自分でバラシた時だから ノーカンか…。
俺は誰にも本心はバレたことがない。
辛くないと言えば嘘だけど俺はいつも仮面を被るのにはなれてたから
きっと今回も上手く立ち回れる。
前の仮面よりも特別な人に被る仮面は重くて脆くて、湿っている仮面だけど、彼の日常に上がる時は必需品なんだ。
俺は一人でマスカレードの舞台にあがる。けれどそれがマスカレードだと誰も気づかない。
それでいい、それがいい。それが演者としての矜持だ。
常に俺を見て、俺を見ないでほしい。
そう考えて眠りにつくとすぐに朝が来た。
あぁ…朝が来てしまった。
今日はtop4の皆で撮影する。
リモートで通話を繋いで皆で軽く小話してから撮影が始める。
順調に撮影をこなしていると
不意にゲーム内で所謂Blという表現が出る。
今やLGBTQは受け入れられ始めてる時代だから出てきてもそんな可笑しいことではない。…けど俺らは自分達が男だと認知しているから多少のもたつきがでてしまう。
それでもコイツらは上手く話を逸らして躱していった。
流石だと感じながら俺はその話に反応して続きが見たいと思った。
勿論言葉では言わないけど。
皆と同じような行動をとるけど
このゲームのやつらみたいにgtさんと付き合うことができたら2人のように求め合うことができるのだろうか。同じようなことができるのだろうか。そう頭に過ってしまう。夢が見たくなる。
けれど俺は一生できないと分かっているから心が痛くなる。
考えないようにとまた自分を客観視して蓋をする。
gt「ん?うっしーどうしたの?気になることでもあった?」
us「え?…何?俺?いや、ないよ?」
gt「 そう?なら進んでいいかな」
久しぶりに危なかったな…
あと少し遅ければバレていたかもしれない
もう少し慎重にならないとな
rt「終わった~…」
rtをきっかけに皆口々に終わった疲れ等を話す。
けれど皆の態度は少しよそよそしかった。
多少なりさっきの展開が残っているのだろう。
その空気でまた心が痛い。
やはり、受け入れることはないんだ
近くに同じ感情をもつ者が居たとしたらきっとコイツらは俺に気を遣うようになるだろう。
早めの解散後、閉じたパソコンの画面に暗い底に沈んでいく老人のような顔が映るのを見た。
パンッと音を鳴らして頬を叩く。
俺は皆が友達として好きで、そっちの展開は嫌だと思う人だ。
笑い合って貶し合う関係を望んでる人なんだ。そう自分に言い聞かせる。
今がリモートでよかった。
こんな顔見せたら皆不審がるだろう。
今日は仮面の被りが甘かった。あと少しで素顔を見られるところだった。
はぁ…今日はとても疲れているようだ。
さっさと編集して寝よう。
俺はまた心に蓋をし直してご飯の支度へ向かった。
いつまでこの想いを隠し通せるだろうか。
壊れる時はきっとあっという間で簡単に消えてしまうだろう。
存在を認知できないようにもっと深くまで心を置いていかなくては。
俺に用意できる全てを彼がいつも通りだと感じられるように…
愛してない。好きだよガッチさん。
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コメント
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辛いよね……確かに男同士だと結婚式とか日本じゃできないと思うし……まだ 男同士とか認めない って言う人も沢山いるもんね……