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発達障害の弟     赤桃   少し紫

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発達障害の弟 赤桃 少し紫

11 - パニックとごめんね。【出張シリーズ】

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2025年07月31日

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パニックとごめんね。【出張シリーズ】













昨日、泣きながらもソファまでたどりついた莉犬。

少しだけ自信がついたのか、今日は玄関からリビングまで、自分の足で歩いていけた。




「えらいな。がんばったじゃん」




そう声をかけると、莉犬は俺の服の裾をぎゅっと握って、黙ってうなずいた。

相変わらず表情はかたいけど、それでも昨日とは確実に違う。







ただ、ソファに座るのはやっぱりむずかしいみたいだった。



近くまで行って、手を伸ばして……でも足がすくんで泣き出す。




「やっぱり、こわい……」




俺は隣にしゃがんで、莉犬の肩をさすった。





そう言って安心させると、莉犬はしばらく泣いて、それからやっとソファにちょこんと座ることができた。






今日は“遊び”がひとつのチャレンジ。



用意しておいたブロックやぬいぐるみを出すと、莉犬は少しずつ手を伸ばして遊び始めた。



最初はもじもじしてたけど、だんだん慣れてきて、声も少しだけ出るようになってきた。




「…これ、バス……」




「ほんとだ、バスのかたちしてるな~」




なーくんも優しく相づちを打つ。



ちいさなやりとり。だけど、それは大きな一歩だった。





しばらくして、俺は仕事の確認で隣の部屋へ移動することにした。




「莉犬、ちょっとだけ行ってくるけど、すぐ戻るから」




「……ん」




少し不安そうだけど、うなずいてくれたから、大丈夫だと思っていた。




……だけど。





5分後、部屋の外から突然――




「さとちゃぁあああん!!」




泣き叫ぶ莉犬の声。



慌てて駆けつけると、ソファの前で、なーくんの服をつかんで大泣きしている莉犬がいた。




「いやっ!いやぁ!どこいったの!?やだぁ!!」




目は真っ赤。

顔ぐしゃぐしゃにして泣きじゃくって、手も足もバタバタ暴れてる。




「莉犬!俺ここにいるよ、ほら!」




俺が駆け寄って抱きしめると、莉犬の手がなーくんの腕にばちんと当たってしまった。




「っ……!」




なーくんが少しびっくりした顔で腕をおさえた。

莉犬はその瞬間、びくっとして顔を上げた。






「莉犬……いま、なーくんに痛いことしちゃったね、ごめんなさいしよっか」




落ち着かせたあと俺がやさしく言うと、莉犬は目をうるうるさせながら、なーくんの顔を見て――




「……ご、ごめんなさい……」




小さな声だったけど、しっかり届いた。



なーくんはすぐに笑ってくれた。




「ううん、大丈夫だよ。びっくりしただけ。莉犬くん、えらいね、ちゃんとごめんねできて」




莉犬はまだ鼻をすすりながら、俺にしがみついたまま、こくんと頷いた。





遊べたこと、ソファに座れたこと、

泣いても落ち着けたこと、そして――



助言ありでも、「ごめんね」が言えたこと。




今日も、ちゃんと前に進めた。




あと少し。

あと少しで、きっと“ここが大丈夫な場所”になる。


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