テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
『うわああああああああああああっっっ』
どかん、ばりばりばりばりっ、どしゃーーん!
叫び声と何かが破壊される音が響き、火の手が上がる森から動物たちが逃げ出していく。
その後、森からは様々な光が飛び出しては何かを破壊して消えていく。
『はあっ、はぁっ、はあっ…』
巨大なクレーターの中央に立っている主は、荒く息を吐きながら何かを探す。
『ノアール!生き返れ!!』
そう叫ぶと、黒焦げになった地面から炭が集まって人間の体を形作り、光ってノアールになった。
【あ、主様…もう辞めてください…】
ノアールは震えながら主に懇願する。
しかし、主はノアールの声など聞こえていない様子でまた魔法を放ち始めた。
『ああああああああっっっ!!!!!
なんで、なんでだよぉおおおおおおおっっ!!
生き返れ!!生き返れよ!!!』
主は泣きながら魔法を放ち続ける。
否、魔法は既に制御を失い主の放出する巨大な魔力が勝手に近くにあるもの全てを破壊していた。
『・・・これはね、一緒に旅してた勇者が死んじゃった時の様子』
水晶から壁に投影した映像を執事たちと見ながら主はポツポツと語り始めた。
『ずっと一緒だと言ってくれたのに、勇者は寿命で死んじゃったんだ。
それでやっと自分が化け物だと気づいて発狂したんだよね。
自分は年も取らない、食事も水も睡眠もほぼ必要ない、人間とはかけ離れた存在なんだって絶望した』
執事たちは暴れ回りノアールを何度となく殺しては生き返らせて、勇者が生き返らないことに絶望する主の様子を何も言えずに見ていた。
『ずーっとノアールと2人で居たからさ、自分が普通だと思ってたんだよね
だけど、普通の人間と出会って旅をして、色んな人間と出会ってさ…
どんどん自分の異質さに気づいていった。
それが爆発したのがこのとき…』
主はそう言うと水晶に手をかざして映像を変えた。
そこには、空中から逃げ惑う魔獣達に向けて魔法を放ちじわじわと追い詰めていく主の姿が。
『これは、もう人間と関わるのを最小限に留めようと思っていた頃の私…
勇者が死んでしばらく経って、勇者のことを思い出にできた頃からはここまで荒れなくなったけど…』
映像の主は罠に掛かって苦しみ悶えて死んでいく魔獣を面白そうに眺めて、ありとあらゆる残虐な方法で魔獣を殺し始めた…
しばらくすると映像が変わり、魔獣討伐を感謝されて混乱する主の様子が映された。
もう落ち着いた頃だったらしく、主は少し距離を取りつつ住民たちと関わりを持つようになっていた。
そして、見覚えのある小屋に移住し薬屋をやりながら噂で魔獣が出たと聞いたら退治しに行く生活をしていた。
『ここからは…見せたら怒られそうなんだけど…』
そう言って主が見せたのは天使と対峙している姿だった。
「死になさい、命のために」
『…死ねっ、死ねっ、死んでしまえ!!!
執事たちをよくも…よくもっ!!!』
主は執事たちが天使狩りで怪我をする度に発狂しそうになるのを必死で我慢して、天使狩りで発散させていたのだ。
天使の群れに魔法をバンバン打ち込み、一瞬で壊滅させる。
『足りない足りない足りない足りない足りない足りない足りない足りない足りない足りない!!!』
主は残った天使たちを短刀でザクザクと切りつけて殺すあいだ、ずっと足りないと口にしていた。
この程度では執事たちを傷つけた分には足りないのだ。
もっと、もっと殺さなくては…
「ーー……、主様……」
その時、指輪から声が聞こえて主は正気を取り戻して屋敷に転移した。
「お帰りなさいませ、主様!
お呼び立てして申し訳ございません。
ただ今お時間よろしいでしょうか?」
ベリアンがにっこりと笑って主に問うた。
『あ、ああ…大丈夫だ…』
主は天使狩りをしてました、なんて言えずに頷いていた。
「あ、主様…」
ベリアンが真っ青な顔で主の肩を掴んだ。
「まさか、元の世界に戻っていた時間って…!」
『あ、うん…天使狩りしてた』
「「「「なんですって!!??」」」」
執事たちはてっきり元の世界の仕事があったりするのだろう、と思っていた時間は天使狩りをしていたというのだ。
通りで遠方での天使の被害を見なくなったと思った、とルカスやナックが頭を抱えた。
他の執事たちも自分たちよりも遥かに強い主だから心配は要らないと分かっていても、なんだかなぁと
言いたげな表情をしていた。
そして、最終決戦…
主はサポートに徹していたが遠距離の天使は勝手に倒してていたことが判明し、主様だけで天使全滅させられたんじゃないかと全員が落ち込んでしまった。
『いやぁ、ほら…あの…ね?
みんな、頑張ったじゃない?ね?』
「「「「「「「「そういう問題じゃありません」」」」」」」」
執事たちは改めて強すぎる主様の能力を思い知り、狂気に触れないよう気をつけることにした。
「そう言えば…ノアール」
【なに?】
「マトモな愛し方されてよかったねって言ってたじゃないっすか?
それはどういうことっすか?」
【…】
『…』
アモンの質問に主とノアールは目で会話した。
『見てて気持ちいいものではないよ?』
【あ゛あ゛あ゛ああああっっ】
『お前は私を捨てないよな!?
私を一人にしないよな!?
答えろよっ!!!!』
主はノアールに短刀を何度も何度も突き刺し、自分から離れていかないか必死に問いかけていた。
【あるじさまっ、あるじさまぁっ…はなれな…からっ…ごふっ…】
ノアールの目から光が消えていき、くたりと力が抜ける。
『生き返れ!』
その瞬間、ノアールの傷が大体塞がって復活し拷問の続きが行われる。
【あるじさまぁっ…あああああ!!!】
『……ふぅ、ふぅ…ノアール、愛してるよ?
愛してる…死なない私の大事な友達っ!!』
【ぎゃぁあああああああああああああああ!!】
「…」
『…』
【…】
「…」
「…」
気まずい。
【解散です。もう今日はいいでしょう】
ノアールが空気を読んでか読めなかったのか解散を宣言し、地獄の空気からは解放された。
執事たちは自分達に同じ愛し方をしなかった理由を何となく察してしまった。
自分達は「不老」ではあるが、「不死」ではない。
だから、愛し方がわからなかったのだろう。
だから、とりあえず手元に置いて考えようとしているのだろう。
ノアールが心配になって主の部屋を訪ねてみた執事たち。
ノックをすると慌てた様子で待つように言われた。
しかし、どたん!と何かが倒れる音がしてドアを開けると、下着姿のノアールがシーツに足を取られて転んでいた。
「大丈夫ですか?」
【あ、ああ…すまない】
助け起こした瞬間、ノアールの身体を見て執事たちは愕然とした。
「「「「「「「女の子ぉ!!??」」」」」」」
コメント
1件
おお…これは重い過去ですね。勇者の死をきっかけにした発狂と、ノアールへの「不死だからこその歪んだ愛し方」。自分が化け物だと自覚した絶望が痛いほど伝わってきました。最後のノアールが女性だったオチには驚きましたが、執事たちに同じことをしなかった理由にも納得。伏線を回収する構成が巧みです。MAKOさんの世界観の深みに引き込まれました。
MAKO