地下 大久保 徹
「うん?」
ぼくは寒さで気が付いた。どうしても寒さ以外でも震えてしまうけど、思い切って目を開けてみた。目の前には巨大な戦車がそびえていた。
「ここは、夢の中?」
まだぼくは寝ているみたいだ。早く起きないと、両方のほっぺたを数回叩くと、やっと目が覚めて来た。やはり、戦車が見える。
「?!」
く……臭い……。血の臭いに似ている。嫌な予感がしてきて、吐き気が緩やかにこみ上げてきた。勇気をだして戦車から遠ざかった。ぼくは人を探しに複雑な線路の地面を、しばらく歩くことにした。
「あれ? 何か落ちてる」
土の地面にはパイプクリーナーがポツンと落ちていた。
「誰のかな……?」
ぼくはパイプクリーナーを持って、再び歩くことにした。西の方からの駆動音が聞こえて来た。
徐々に大きくなるその音は、まるで……。
「な……何?!」
こっちへ来る! 手にしたパイプクリーナーを強く握って、元来たところへ走った。
「車に轢かれそうーーー!!」
そう、昔聞いたことのある電気自動車の音だった。タイヤの音以外は、エンジン音がなかなかしない。
車はスピードを上げたみたいだ。ギュッギュッっと、タイヤが地面と擦れる音が後方でしていた。まるで、ぼくをかなりの速さで正確に追いかけているみたいだった。ぼくは怖いけど、戦車の下や複雑な線路の上をジグザグに走った。息切れで苦しくなった。過呼吸になって、それでも風の吹く反対の方向へと走りに走った。
「あ! そうだ! パイプクリーナー!!」
ぼくは、パイプクリーナーを地面にぶちまけた。こうすれば……。
後方を見ずに一直線に走り、前方に出現した暗い洞窟へと向かった。