夜。
再びあの“廃スタジオ”に、5人は戻ってきていた。
【なぁ、ホンマにここで合ってるんか?】
リチャードが懐中電灯を照らす。
光の先には、埃をかぶった古い撮影機材と、割れた鏡。
かつて“夢ノ欠片キャンディ”を見つけた場所だった。
『確かに……。でも、前に夢ノ欠片キャンディを拾ったんやけどな。』
晶哉がしゃがみ込み、床を調べる。
《……なんか、空気ちゃうな。》
健が小さく呟いた。
誠也はその言葉にうなずく。
どこか胸の奥が、ざわついていた。
“懐かしいような……でも、怖い”感覚。
その時だった。
スタジオの奥から、低い声が響く。
{……来たか。}
〈!?〉
ライトを向けると、白衣を着た男が立っていた。
年齢は60代ほど。
その瞳は、どこか誠也に似ていた。
『あんた……誰や。』
晶哉が一歩前に出る。
男はゆっくりと笑みを浮かべた。
{……私の名は末澤雅人。……誠也の父だ。}
〈誠也くんの……!?〉
良規が驚きの声を上げる。
「なんで、ここに……。」
誠也の声は震えていた。
頭の奥で、“父”という言葉が、遠い痛みを呼び起こしていた。
雅人は小さな箱から、小瓶を取り出した。
中には、光を放つ赤と青と緑の飴……
いや、三つの“夢ノキャンディ”。
{これが“夢ノ宝石キャンディ”だ。夢ノ雫、夢ノ欠片、そして夢ノ宝石。三つが揃う時、全ての記憶が帰る。}
『どういう意味や!』
晶哉が詰め寄ると、雅人の表情が冷たく変わる。
{……実験の仕上げに、君にも協力してもらおう。}
次の瞬間、晶哉の体に電流のような光が走り……
『うっ……!』
晶哉は膝をついた。
【おい、やめろ!】
リチャードが叫び、良規と健も駆け寄るが、雅人は冷静に言い放つ。
{“夢ノ実験”は途中で終わるわけにはいかない。こいつの記憶も消してやる。}
「やめろ!!」
誠也が叫び、駆け寄った
その瞬間、晶哉は飛びつき雅人の腕を思い切り“ガブッ”と噛んだ!
{ぐっ……このガキが!!}
痛みに耐えきれず、雅人の手から“夢ノ宝石キャンディ”の瓶が飛んだ!
〈健ちゃん、キャッチ!〉
良規の叫びと同時に、健が宙に舞う瓶をしっかりと受け止めた。
《セーフ!……危なっ!》
雅人は歯を食いしばりながら、誠也を睨みつける。
{お前は……やはり実験の鍵を持つ存在だったか。}
誠也は息を切らしながら、震える声で言った。
「俺……なんで、あんたのこと……怖いんやろ。」
“父”の姿に、過去がチラつく。
白い部屋、テーブルの上の3つの飴、身体を固定され泣き叫ぶ幼い自分。
記憶の蓋が、少しずつ音を立てて開いていった。
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