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私の悲痛の主張により、チャールズがリリアンとの婚約を破棄することを決意してから三日が経った。

あの日から、チャールズは私の教室を訪れることもない。


「マリアンヌ」

「あ、マリーン」


リリアンとの一件から、私はマリーンと一緒に過ごすことが多くなった。

マリーンが私に話しかけるようになってから、私に対するクラスメイトの反応も徐々に変わってきている。

リリアンがいなくなったことで、息苦しかった教室の空気も良くなってきた気がする。



「体調は平気?」

「え、ええ。昨日はぐっすり眠れたわ」

「それは良かった」


授業が終わり、寮へ戻った私たちは、私室に戻らず共用スペースで雑談をしていた。

トルメン大学校の寮部屋は、リビングや軽食を調理できる共用スペースと二部屋の個室で構成されている。

今までの私とマリーンは共用スペースを使わず、帰ったらすぐにそれぞれの私室に入っていた。


「あの……、貴方に渡したいものがあるんだけど」

「なにかしら? すっごく楽しみ!!」


マリーンは一旦、私室に戻り、何かを持ってきた。

長方形のキャメル色に塗装された小さな木箱が二つ。

見覚えがあるものだ。

マリーンはそれをテーブルの上に置いた。


「あ……」


それは私が自分とマリアンヌ用に買ったガラスペンのケースだ。

木箱にはそれぞれ”ロザリー”、”マリアンヌ”と彫られている。間違いない。

だけど、ケースとガラスペンはリリアンに破壊され、無残な姿になったのを私はこの目で見ている。そして絶望したのを覚えている。


「あの日のことを思い出してしまうかもしれないって思って、渡すのが遅れてしまったわ」

「でも、これはリリアンに壊されたはず……、どうして―ー」

「あたしが魔法を使って直したの」

「魔法……、あの時、ガラスの破片が空中でピタッと止まったのも……、魔法なのかしら?」

「うん」


私は新品同様に戻ったケースを開ける。そこにはガラスペンが入っていた。持ち手や先端は欠けておらず、壊されたのが夢だったのかと思えてしまうくらい精巧に修復されていた。


「ケースは二つ直せたんだけど、ペンは破片が散らばっていて一つしか直せなかった」

「それで充分よ! ありがとう!!」


私はマリーンに感謝の気持ちを示す。

マリーンは頬を赤らめ、照れていた。


「でも、どうしてマリーンは魔法を使えるの?」

「あたしのお母さんがカルスーン王国の人だから」


その話を聞いてしっくりときた。

カルスーン国民との混血であれば、魔法を行使することが出来る。

純血の人よりも強い魔法が使える人もいれば、弱い人もいるらしいけど。


「ここでは使わないように生活してたんだけど……、これは特別」

「突然魔法を使ったら、驚かせてしまうものね」

「それもあるけど……、マジルの人たちは魔法が大嫌いだから」


それは知らなかった。

トルメン大学校には隣国からの留学生がいる。学長の娘であるマリーンは魔法を行使することでトラブルになるのを避けるために、自身の力を抑えているのだ。


「マリアンヌ」


真剣な顔つきになったマリーンに見つめられる。


「リリアンのこと、今まで助けてあげられなくてごめんなさい」


マリーンは私に頭を下げ、今まで私とリリアンとのやり取りを傍観していたことを謝った。


「……いいのよ。リリアンさまは誰にも止められなかったでしょうから」


私は顔をあげるよう、マリーンにお願いした。

チャールズでも手に負えないのだ。マリーンが注意したとしてもリリアンは止まらなかっただろう。


「チャールズさまの後ろ盾が無くなったら、復学したリリアンさまも大人しくなると思います」

「きっと、ね」


マリーンは歯切れの悪い返事をする。

そこで、私たちの雑談は終わった。



私室に入った私は、引き出しから便箋を取り出し、マリアンヌとクラッセル子爵に手紙を書く。

クラッセル子爵には、別れてから起こったことを淡々と綴り、マリアンヌには学校生活が少し良くなったことを書いた。

それらを封筒に入れ、ロウで封をした。あとは、発送するだけだ。


(マリーンにお礼……、しないと)


ベッドに横になり、私は一息つく。


(それなら、グレンにも、だよね)


グレン、マリーン。この二人には助けられた。

何かお礼の品を送りたい。


「そうだ! 焼き菓子を贈ろう」


クラッセル子爵に贈るはずだった菓子はリリアンに粉々にされてしまった。

なにで埋め合わせようか考えていたけど、二人のお礼の品を考えていた時に私はひらめいた。

材料費を支払えば、製菓クラブから材料と調理場を貸してもらえる。


(よし! 明日、やるぞ!!)


私は明日、助けてくれた二人、クラッセル子爵のために焼き菓子を作ることに決めた。





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