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この家の中で味わう苦しみを与えたいわけじゃない。

遥香には、私と両親が味わった、社会から見下され、蔑まれて味わう苦しみを与えたい。


だから……今は私が耐える時よね。

私は何も見えない中で、優しいままだけれど事件以降は表情の乏しくなった父と母の顔を思い出した。


Purururu……


「もしもしぃ……ああ、そうなの。嫌になっちゃう……私の家政婦がどんくさいせいで遅れたのよ、最悪でしょ?」


電話の相手は遥香の友達だろうけど……私の家政婦、ねぇ……


「ホント、来た時の挨拶から家政婦ごときに張り切るバカだと思ったけどね……うん……」


なかなかいい音声資料だわ……


「アハハッ、そうそう……セレブインフルエンサーの私とは真逆の女ってことよね。それって、まあ私の存在価値を上げるっていうか、高らかに示すっていうか、そういう道具になるね」


セレブインフルエンサーねぇ……


「じゃあ、バカをしつけてる最中だから切るね。じゃあ、あとで、バイバイ」


よっしゃ、ここへ来て以来、最高の音声が手に入った……と心の中でガッツポーズをした私の髪が


ぐいっ……


力いっぱい、一束引っ張られたことで体が右へ大きく傾いた。

そんなこと気にせずに、がしっと髪が高熱に襲われる感覚を覚える……やられたっ、と思ったけれどここまできたら徹底的に証拠を集めると、私は腹をくくった。


「遥香様っ、あついっ……」

「そんなはずないでしょ?」


ヘアアイロンを滑らせる気のない彼女はじっと髪を挟んでいるので、明らかにおかしな臭いがしてきた。


「髪、焦がさないでっ」


私がはっきりと大きな声で言ったタイミングでヘアアイロンが遠ざかっていく……が、また少し場所を変えて一束……


「いたっ、そんな風に引っ張らないでっ……痛いっ!」


状況説明の声だけれど、本当に痛いからね…


「練習、練習」

「どこが練習ですかっ?そんな高温でじっと挟んだら、髪が燃えます…!」

「えぇ?そうなの?ふふふふっ……やってみないと分からないわよね、練習だもの」


三度目にそれを繰り返す途中


「何をしている…?」


目隠しをされた私には見えないけれど、ドアの開いた気配と篤久様の声がした。


「クサい……」


彼の“クサい”を聞くのは二度目だな。


「ああ、練習ちょっと失敗かな」

「失敗かな?そんなレベルですか?目隠しの意味は?」

「お楽しみってことよ、お兄様。真奈美、無理だったわ。ここ、片付けておいて」

「どこへ行く?」

「イベントには遅れてしまったけど、そのあとの食事には行くから」

「こんなことをしておいてですか?」


篤久様の声を聞きながら、目隠しを取った私は


「篤久様……私が手際よく出来なかったせいで遥香様が遅刻されてしまったということでしたから…」


かばってくれるのは有難迷惑なのよ、と思い言葉を探す。

嫌がらせやいじめという言葉で済まないくらいの本性を掴んでから、私は遥香を堕としたいの。

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