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……猫を飼いたい、とびっきり可愛い猫を
……そうか、また今度な
聞き慣れた音だ。
いつまでも聞いていたいような音だ。
ただ、同時に寂しさを感じさせる音でもあった。
……いいかショーマ、叔父さんのところへ行ってもいい子にするんだよ
……うん
……いつ帰ってくればいいの?
……父さんが帰ってくるまで、叔父さんのところで泊まるんだ
……うん……
…………何、気にすることはない、すぐにでも帰ってくるさ
……うん
僕はそうした父子のやりとりを見ていた。ただもう一方で、僕にはどうすることもできない現状に残酷さを見出してもいた。
すると父のほうが僕の方にやってきて言った。
……私はもう長くない。”Flute”、お前には自由な”人生”を歩んでほしい。ショーマにも、そう伝えるつもりだ。今までショーマの、そしてワタシの支えになってくれてありがとう。
山ほどの未練が僕の心を締め付ける。
…………幸せになってくれよ
僕は窓辺から飛び発った。
人はそれを、”青空”、”雨”、”太陽”、そして”天気雨”と言う。
人はそれを、”窓”、”窓”、”照明”、”建物”、そして”都市景観”と言う。
人はそれを、”翼”、”嘴”、”鳥”、そして”燕”と言う。
人はそれを、”人”、”物”、”心”、”幸せ”、そして”人生”と言う。
雨は昨日とともに去っていった。
…………
ふと色褪せた白い天井が目に写った。もう随分と太陽を見ていなかった所為だろうか、なんだか眩しくも見えた。殺風景なベッドの腹の辺りに目をやる。床に膝を付けながら彼女はスー、スーと軽い息を立てて寝ていた。つい先程まで散々泣いていたのだろうか、白一面の掛け布団は彼女の部分のみ少し湿ってもいた。病院の一室であったことは彼女が起き上がった後に抱擁とともに知らせてくれた。
2018/10/18
時計が無機質な表示を映している。よほど日が経っていたのだろう。彼女の頭を撫でながら想像した。彼女は一体どれほど長く私と付き添ってくれていたのだろうか。彼女は今の私をあの頃の私のように特別な存在として思ってくれているのだろうか。どちらにしろ、もっとあの時から彼女に感謝なり恩返しなり返してやればよかったと思った。
久しぶりに空を見上げてみようと思った。