テラーノベル
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先代首領の崩御を経て、森鴎外が新たな「首領」の座に就いてから間もない頃。
マフィアに加入したばかりの15歳の中原中也は、不機嫌極まりない顔で、太宰治と並んで机の前に立たされていた。
森は机の上に二枚の診断書を並べ、楽しげに目を細める。
「いやあ、実に興味深い結果だ。我がポートマフィアの未来は、これでより盤石なものになるかもしれないね」
「森さん、早くしてくれない? 僕は早くこのチビの隣から離れて、確実に死ねる場所を探しに行きたいんだけど」
「あ? 誰がチビだクソ太宰! 手めぇの面拝んでるだけで虫唾が走るんだよ!」
言い合うふたりを、静かに見下ろした。
その瞳の奥にあるのは、組織の長としての計算と冷徹さだ。
「まあ、そう焦らないで。君たちがマフィアの構成員となった以上、第二性の検査は義務だからね。前線に立つ戦力の性質を把握するのは、上に立つ者の役目だ」
森はまず、太宰の診断書を指で叩いた。
「太宰くん。君は、他者のフェロモンによる支配や影響を完全に無効化・隠蔽できる、極めて稀少な『α』だ。君の異能『人間失格』は、どうやら第二性の本能にまで作用するらしい。」
太宰はつまらなそうに「へぇ」とだけ零した。
自分が人を支配する側の『α』であることなど、彼にとっては生きる退屈さを増すだけの要素でしかない。
「そして──中也くん。君のデータだが……」
森の視線が中也に移る。
その瞬間、中也の背中に冷たいものが走った。
「君は、非常に強大で濃厚な、けれど未成熟な『Ω』だ」
「……はい?」
中也の思考が停止した。
Ω⋯
それは、この世界において「支配される側」であり、発情期になればαに肉体を差し出さなければ正気を保てなくなる、最も戦場に不向きな性だ。
マフィアという弱肉強食の組織において、致命的な弱点になりかねない。
「嘘だろ……。俺が、Ω……?」
「嘘じゃないよ、中也くん。君の中の『荒覇吐』の強大すぎるエネルギーを、人間の肉体で制御するために、君の身体はあえて最も受容性の高い『Ω』の性質を選択したんだろう。……だが、困ったね。ポートマフィアの貴重な戦力である君が、戦場でヒートを起こし、敵のαに組み敷かれるようなことがあっては、組織の重大な損失だ」
森の言葉は容容赦なく、マフィアとして生きる覚悟を決めたばかりの中也のプライドを切り裂く。
中也は拳を固く握りしめ、歯を食いしばった。
その時、隣にいた太宰が、初めて中也をじっと見つめた。
(中也が……Ω……?)
太宰の鼻腔を、かすかに掠めるものがあった。
今まで「不快な犬」としか思っていなかった中也から、ほんの僅かに、熟す前の青い果実のような、ひどく甘くて狂おしい匂いが漂ってきた気がしたのだ。
太宰の体内で、未だ眠っていた「αの本能」が、カチリと音を立てて目を覚ます。
「……森さん」
太宰はいつも通りの乾いた声で、しかしどこか底の知れない響きを帯びて言った。
「その『犬』の首輪の鎖、僕に預けてくれない? 僕の異能なら、中也のΩの暴走だって無効化できる。マフィアの戦力として、僕が責任を持って管理してあげるよ」
コメント
1件
読み終えたわ!ABO設定×港口マフィア、しかも中也がΩで太宰がαって…これは滾るやつだ🔥 「荒覇吐」のエネルギーを制御するためにΩになったっていう設定の組み込み方が上手いし、太宰が「管理してあげるよ」って言うときの底の知れない口調がめちゃくちゃキャラに合っててゾクッとした。続き、めっちゃ気になるわ!
ハム
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