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桜は、

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桜は、

1 - 桜は、

♥

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2025年03月30日

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桜は、




「桜の、」を先に読むとよりお楽しみいただけるかと思います。









諸々の事件対応を終え、デスクに戻りため息をつく。

帰ってきてからすぐさま組織改革に取り掛かった。

危なげなやつは証拠を叩きつけ解雇して、ギャングに圧かけて動きを抑え、街を駆けずり有望な人材を引き入れた。

それでも問題は腐るほど起こるもので、

上司も部下も関係なく不祥事は全て俺にくる。

事務作業の域超えてない?と思うほどうずたかく積み上がった書類を見てまたため息が出る。


「レダーさん、お荷物来てますよ。」


新しく入れた懐っこい後輩がそう言った。

特にこちらからは何も注文していないので、外部から来たものだろう。

珍しいな、と思って席を立ち、玄関へ。

作業服の配達員と会釈を交して荷物を受け取る。


「随分素敵なプレゼントですね。」


キャップのしたに眩しく笑顔をたたえて配達員が言う。

なんの事かと思えばなるほど、ゴテゴテと箱全面になにやら書き連ねられていた。

礼を言って別れ、デスクへ戻る。

さて何やらごちゃごちゃと、何が書いてあるのかな?



“なんも言わずに帰るマ?”

1番どデカく、赤いマーカーで書かれたこの字は恐らく蓮だな。しょうがなかったんだ。お前起きないから。


“お元気ですか。”

たった一言。ピンクのボールペンで書かれた字。きっと夕コだ。帰ってきたようで何より。


“いっしょにっていたくせに うそつき”

これは芹かな。頑張って書いた跡が見える。確かにそんなことも言った気がするな。ごめんね。


“たまに連絡よこせよ みんな待ってる”

口調と消去法でこいつは音鳴だと分かる。そういえば手紙書くとか言って全然書いてねーや。


“レダーさん元気ー?桜咲いたよー”

青色のこの字は刃弐かな、小さくネズミの絵文字が描いてある。そうか、設立した時もちょうどこのくらいだったな。早いものだ。


“店長、いかがお過ごしでしょうか。新しい構成員も入り、店長のホットドッグは受け継がれていますよ。”

プリントしたみたいに綺麗に揃ったこの字は間違いなくケインのもの。どうやら順調にギャングとして育っているみたいだ。良かった。


“先生!おれヘリうまくなったんすよ!いつかとなりに乗ってください!”

本人に似て丸っこい字のトピオ。そうだね。俺も乗りたいよ。


“今度遊び行くから案内してね”

紫の癖字は紫水か。え、来んの?マジで?……見せるものなんかないけどなぁ。


“香水使ってくれてます?やっぱりまた会いたいですよ レダーさん”

ジョア。ありがたく使わせてもらってるよ。でも俺にこの爽やかな匂いは若すぎる気がするよ。


“JDです。こっちもかなりいろいろあったんで、レダーさんも近況、待ってます。”

こう言われちゃ、早いとこ手紙書かなきゃな。敵討ちはどうなったろう。元気ならそれでいいけども。


“はじめまして、轟ばーどと申します。楽しくやらせてもらってます。”

新しい構成員だろう。なんだかシンパシー感じる名前だが、楽しんでやってるみたいだ。


“こんにちは!魚参屋(あじやって読みます!)です、はじめまして!この度868に嫁いできました!俺の知らない旦那様、いつかお会いしたいです!”

……?こいつはまた、随分濃いな…。まあギャングというよりギャグ集団だったし、入っているなら合う人ってことなんだろ。頑張れ。


“特に書くこともありませんね。”

黒くて細くて簡潔な1文。ぐち逸か。そういやどうしてんだろ。元気かね。



一通り読み終えて、ニヤついたりして。

これだけで十分お腹いっぱいだわ。

テープに被った文を傷つけないように、カッターを入れる。


箱を開けると、目に飛び込む桜色。

比喩などではなく本当に桜が入っている。

ふわりと香った花の香りに思わず笑みが溢れる。

枝を持ち上げればその下には大きな本。

これはアルバムか。濃いピンクの表紙には、見知った数字3文字。

1ページ1ページ、大切にめくる。

はしゃぐ夕コと芹沢、カジノで爆死する音鳴、事故った蓮に、カスタム中であろう刃弐。

ケインと構成員が仲良く受注場所にいる写真や、クッキー戦隊の写真。クリームまみれのトピオと笑う芹沢。音鳴の治療をするぐち逸。大型服を着た全員の集合写真。

知らない顔は新しい構成員か、どれもよく撮れている。

最後のページに、白髪の青年の自撮り写真。

『カメラマン魚参屋です!』

癖のない字でそう書かれていた。




「……元気そうでなにより。」


桜を生ける花瓶を買おう。

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