テラーノベル
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警察署の朝は,慌ただしい。
私は自分のデスクに座り,黙々と書類を処理していた。
コーヒーはもう半分減っている。
桐島 恵(27)警察官。
昔から柔道をやっている。
感情より合理性。
恋愛より仕事。
誰にでも同じ距離で接する。
それが,私のやり方。
「…………。」
顔を上げる前から分かる。
この“近さ”は一人しかいない。
「恵……おはよっ。」
低く,気だるい声。
中野 隼人(25)同じく警察官の相棒。
顔が整いすぎているせいで,無駄に目立つ男。
女性からめちゃくちゃモテていて,一目惚れというのも珍しくない。
「眠そうね」
「そらな。昨日ほぼ寝てへん」
「自業自得でしょ」
「冷たいなぁ」
そう言いながら私のデスクに体重を預ける。
距離が近い。
「中野」
「ん?」
「近い」
「恵が遠いんちゃう?」
「意味不明」
中野は小さく笑った。
この男,;普段は眠たそうとしているくせに
言葉だけは妙に的確で……危ない。
「なぁ」
「なに」
「その顔,仕事以外で見せたら反則やと思うで」
「……は?」
「真面目すぎ」
私はペンを置いて,椅子から立ち上がった
「仕事中」
「分かってる」
ちゃんと分かってる上で言うのが腹立つ。
「でもさ」
少し声を落として……続ける。
「恵って,ガード固いくせに無防備やな」
「それ矛盾してる」
「してへん」
視線が合う。
数秒。
「……中野」
「冗談」
すぐに軽いトーンに戻る。
「仕事戻るわ」
「最初から戻りなさい」
「はいはい,お姉さん」
「その呼び方やめなさい!」
即座に言い返すと
中野は面白そうに肩をすくめて自分の席に戻った。
本当に,分からない男だ。
何を考えているのか。
どこまで本気で,どこまで冗談なのか。
ただ一つ確かなのは……,
中野 隼人は
こちらの反応を楽しむタイプで
私は今日も
それに冷静に付き合っているつもりでいる。
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