浜辺ではしゃいだり
戦いに高揚したり
きらきら光る星は今にも潰えてしまいそうで
でも俺は手を出せない。
一度だけなら見送れると決めたから。
「はは、早死にすると思ってた俺がおじいちゃんになるまで生きられるとはね。」
「できるだけ、長くいたかったから。」
「知ってるよ。さみしがりの師匠。俺の愛した人。」
そう言って笑うその顔は全然変わってなくて。でも、皺が増えて、身体もだんだん衰えて、もうベッドから起き上がれない彼とずっと変わらないハリのある肌、衰えない身体、今でも世界を飛び回れる自分を比べて違いを見つけて、現実を見て、やっぱり逃げられない寂しさを感じる。
「でも、俺はあれだけ邪眼を、そして身体に負担をかける魔王武装を使って、大怪我もいっぱいして。この命が潰える時は戦場で死ぬものだろうと思っていたのは事実だよ。」
「でも、まだまだ短いよ。」
「俺は五十歳超えられるかわからなかったのに、あと数日で、七十歳を迎えようとしている。」
「それでも、私の生きてきた時の数千分の1に満たない。」
「定命で短命な人間に永命の存在の歳に追いつけって、無茶だよ。」
「一緒に、歩いていきたかった。結局、私の故郷も見せられていないし。」
「…そうだね。」
「うん。」
「ああ、ほら、泣かないでよ。目が溶けちゃう。」
過去のいつか、俺が泣きじゃくる幼い彼にした言い回しを真似ながら、泣く俺の涙を拭う。
「私…いや、俺は、さみしいと死んでしまうよ。」
「でも、次会う時、迎えに来てくれないと困るよ。」
「また、会ってくれるのかい?」
「そうに決まってるだろ?」
「2回目じゃ、逃がしてあげられないよ。」
「別に?」
「逃げられるチャンスは、今回しかないよ?」
「でも、俺が逃げたってずっとおれを想いつづけるでしょ?」
「本当に、いいの?」
「いいよ。だって、おれのわがままをかなえてもらってるわけだし。」
「そう…」
「だから、またあえる、から、だから、今はーーーーー」
「 」
手から力が抜ける
耳を澄ませて聞いていた鼓動が聞こえなくなる
あたたかいのに、冷たい。
あたたかいのに、もうどこにもいない。
だんだん冷えてゆく身体を優しく抱きしめる。
「…またね。」
彼が最後に発した言葉にそう返した。
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