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🧡『今から行くし』
💚『了解』
それだけのやり取りをして阿部ちゃん家に向かう。
みんながあんま入ったことないって言う舘さんの家も俺は入ったけど、阿部ちゃん家も入った人少ないって聞く。
俺は結構出入りしてるねんでと言いふらしたくなる気持ちをその話を聞く度に抱いて、その都度なんとか抑え込んできた。
俺は自慢してもいいけど、それで阿部ちゃんが他の人に家入れてってしつこくされたら可哀想やし。
何より今の阿部ちゃんをあんま色んな人に見せたないし。
そんな事考えてたら、マンションに着いた。
インターホン押したら、『どうぞ』って聞こえてオートロックが開く。
🧡「お邪魔します」
いつも何となく自動ドアに挨拶してまう。
『玄関開けとくね』とメッセージが来た。
阿部ちゃんはリビングのソファに座って笑顔で俺を出迎えた。
🧡「そんな顔しな」
💚「ん……」
それが張り付いたニセモノの笑顔な事くらいすぐわかる。俺がそう言うと、阿部ちゃんは困ったような顔をした。
阿部ちゃんの様子がなんか違う気がして声をかけたのは2週間前のこと。
『どうしたの?何もないよ』と笑って誤魔化されそうになったけど、絶対ちゃう、俺わかるもんとしつこいくらいに食い下がったら諦めたらしい。
💚「話、聞いてくれる?」
🧡「もちろん」
練習終わりのカフェで、最近ちょっと調子悪くて…から始まり、よくよく聞くと仕事で反省する事が多くてかなりネガティブになっていた。
阿部ちゃんはしんどい時にもあんま口に出さないで1人で溜め込んでまうから、負のループから抜け出せんくなったみたい。
🧡「飯食ってる?」
💚「んー…あんまり」
家に帰るともう身体動かなくて、と苦笑いで濁す様子を見てると、食べてないんやなってすぐわかる。
🧡「よっしゃ、わかった。俺たまにご飯作りに行くわ」
💚「そんな、悪いよ」
🧡「あかん。話も聞くし」
はじめは遠慮されたけど、そのうち他のメンバーにも気付かれるで?って言ったら折れてくれた。
実際家で会う阿部ちゃんは、ようあんなに外で何でもない顔できんなってくらいぼんやり無表情でソファに横になっている。
部屋は散らかってないけど、多分そもそも物出してないんやろなと綺麗な部屋と対照的にやたら溜まった洗濯物を放り込みながら思う。
🧡「何食べたい?」
💚「ん…今日あんまり」
🧡「そか。だし巻きでもするか」
💚「ありがと…」