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あなたが好きなんです!あなたのことが好きすぎて可愛くなっちゃう諸伏警部といっしょ!
第1話 - あなたが好きなんです!あなたが好きすぎて可愛くなっちゃう諸伏警部といっしょ!
12
4,777文字
2026年09月27日
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2026年09月27日
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「すみません」
と小さな声がして名前は振り向いた。
「はい。本日はなんでしょう?警部」
名前はにっこり諸伏の前に立った。
「…」
「ん?」
名前はじっと見られて目をぱちくりする。
「あ…」
「あ?」
「頭…」
「へ?」
諸伏は目をそらす。そらして1枚の書類を胸元に抱いたまま。
「…髪。切ったんですね」
「え?あぁーー」
名前は頭を恥ずかしそうに押さえる。
「思いきってミディアムにしました!結構長くて…頭重たかったから!」
「そうですか」
諸伏もにっこりする。またしばらくそのままで2人はいる。
「あ、それは?」
「あっ」と諸伏は思い出したように書類を置いた。
「ご確認お願いします」
頭を下げる諸伏に、名前はふふっと笑う。
「はい。ちょっと見せてくださいねー…えー…」
名前はすぐわかった。ぷっと笑ってしまう。
「警部ってば…」
ぱし、と肩の辺りを軽く叩くと、諸伏はびっくりしたようにその叩いた箇所を見た。
「お名前!名前がないです!テストなら0点ですよ!あはっ…」
名前は未だに固まって、肩の辺りを押さえる諸伏にクエスチョンを浮かべる。
「警部?」
はっ、としたようにすぐ万年筆を出す諸伏。めちゃくちゃ書くの速かった。
「よろしくお願いします…」
「ふふっ、はーいーー」
「あっ」
「え?」
名前は振り向いた。諸伏はもう階段のほうからからだ半分だけ出している。でも視線はどこか斜めで。
「…髪…似合ってると思います……その、長いのもよかっーーたです…」
諸伏咳き込む。
「…あ、ありがとうございます…?」
そのあと階段から少しもたつく音がして、名前はまたクエスチョンで振り向いた。
「…」
静かに一課に戻ってきた諸伏。席についてしばらくして、思い切り下を向く。
「…最近どうしたのあなた」
上原が眉をひそめて聞くが、返事はない。
「ハッ…治らねぇ病気にかかってんだよ」と大和がパソコンをスクロールしながら言う。
「何それ?」
「…上原刑事は」
と下を向いたままもそもそ聞こえて上原はまた横を見る。
「頭…髪型を褒められたら嬉しいですか…」
「え?あー…そうねぇ。まぁ、嬉しいわよ。人によるけど…」
「…すぐ反応できませんでした…あんなに可愛かったのに…」
諸伏ひとり反省会が始まり、上原は困ったようにそれを見た。なぜか肩の辺りを押さえたまま。
「それで?はい、なくした部分をお伺いしても?はい…」
諸伏は苛々していた。地裁に提出した書類を一部紛失したと電話があって、またやり直さなければならなくなったから。
カチカチとボールペンをやり、眉をひそめて色んなところを引っ張り出してめくったり出したりして。
「はい…いえ。今日中は無理です。はい。管理はどうなっているんですか?」
足を組んでコンコンとボールペンをデスクで叩いていたらーー廊下から名前の声がして、諸伏いきなりがばっ!と机の下に頭を入れる勢いで小さくなる。
びくっ、と上原がそれを見た。
「あ。上原刑事~」
饅頭
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#風見裕也
#降谷零
と手を振る名前。上原もにっこりそれを返す。
「…いえ。ですから今日中は無理なので…出来上がり次第…すぐ行きますから…いえ。お互い様です…えぇ、では……」
急に声を小さく柔らかくする諸伏に、上原はふう、とため息をつく。
「…よかったわね。見てないし聞いてないわよたぶん」
「…こんなに散らかしているのだって…だらしないと思われたらと思うとろくに仕事もできなーー」
「あっ諸伏け…」
と何故か名前が戻ってきて、諸伏積み上がったファイルの上でそれを隠すようにからだを乗せる。
首を必死に振る諸伏に、大和がついにふははと笑い声を出した。
「(早く!)」
「え?」
「(早く行ってください!汚いの見えちゃうでしょう!)」
もう…と上原が行く。
「警部?」
と覗こうとする名前の前に上原にっこり立つ。
「あ、どうしたの名前?」
「みかん!田舎の両親がたくさんくれたんです。だから持ってきました!」
「あら、ありがとう。みんなでいただくわね」
「大和警部もっ」
おう、と大和が手をやる。
「諸伏警部にも…」
「えぇ。ちゃんとみんなに配るから」
上原はまた移動してにっこりし続けた。
名前が敬礼していなくなり、上原が振り向いたらデスクに力尽きている諸伏。
「…ねぇ、余計なお世話かもしれないけど…普通にお茶にでも誘えば?」
「無理です」
ふーっ、と息して片付け出す諸伏に、上原首を傾げる。
「…この間通りかかったら」
「わかるかも~」
とストローを吸う名前が休憩室でちらと見えて、諸伏はさっと壁に張り付いた。
「わたしも珈琲紅茶大好きだから飲み過ぎちゃう」
「でも名前さ、生理痛重いじゃん?」
「ディカフェにするだけで結構違うよ?スタバでも対応してるしさ」
「知ってはいたんだけど…試してみようかな?」
ね~と和気あいあいとする若い女子らに、諸伏はすぐスマホを出してディカフェを調べていた。
いや知っているが、念の為。
「…カフェインを含まないお茶を出すカフェ?どこにあるんですかそんな店は」
「普通にチャッピーに聞いたらいいじゃないの…」
「彼女とは年がかなり離れてるんです。彼女は今年の新卒ですからーー」
と前のめりになる諸伏。指を折って数えていく。
「そんなことも知らないのと思われたらどうしてくれるんです」
「わ、わたしにそんなに怒らないでよ…」
「それにふたりきりで…」
警部っ
諸伏は首をまた諦めたように振った。無理だ。正面であの笑顔でずっと話しかけられるなんて…天国みたいな…
「…可愛すぎて地獄です」
ぶっ、と上原。
「名前はでもあなた、人気あるわよ」
じと、と諸伏は上原を見た。
「そんなの…わかってますよ…」
「いつもの冷静なあなたでいいと思うけど?ほら、同期にはない大人の魅力で…」
「訳わかんねぇことわざばっか言ってたら魅力もクソもねぇけどな?」
ひひ…と笑う大和もついでに睨みつけた。
「…」
どうしてこうなってしまうのか。諸伏はまた気づいたら、ひとり反省会をしながら額に手をやり歩いていた。よろ、と休憩室に寄る。
そもそも可愛い。それが悪い。わたしは悪くない…
「はあ…愛でたい……」
切実に。一生撫でていたい。
諸伏は天井をぼうっと見たまま呟く。
「あぁ~~~~!!」
と休憩室にいたら廊下から聞こえる声に諸伏は珈琲を吹いた。
「名前さん…?」
すぐ休憩室を出ると、踊り場で大量の紙を、たぶん資料を集める名前がいた。
「!」
名前が振り向くと泣いていて、諸伏は珈琲を後ろに放り投げていた。
「名字刑事ーー」
と駆け寄ると、ひっくり返った段ボールを起こす名前の、いつもの笑顔を浮かべる大きな瞳から溢れる涙。
「あ、警部…」
名前はぐす、と涙を拭う。
「重たくて…落っことしちゃって…どうしよう…」
「大丈夫ですよ…」
辺りを同じように拾い出す諸伏。ちら、と名前を見たら、驚いたのか未だ呆然として涙を拭うだけ。
「…名字刑事」
名前は目を擦り膝をつく。
「…わたしが初めてあなたを見たのは、幼稚園での避難訓練と横断指導でした」
その日は消防車も来て、子供たちは興味津々だった。だが火事を再現した煙のなかを通る訓練では、たくさんの子供たちが泣いていた。
名前は子供たちをひとりずつ抱き締めて、一緒に泣いていた。
なんでお前が泣くんだと誰かに言われたとき、彼女は言った。
安心させたいからーー
「…警部?」
諸伏は名前の頭に手をやっていた。
撫で下ろし、そのまま強く抱き締める。
ばさり、と重ねていた書類が舞った。
「…大丈夫ですから」
もう泣かないでーー
「…っ」
「…」
しばらくして諸伏は我に返り思った。
ヤバいのではないか?
……どうしたら…
最悪だ。どのタイミングで離せばいいのかもわからないし、結構な力で…痛くなかっただろうか…
諸伏は自分がぐちゃぐちゃになっていくのを感じ、とりあえず。とりあえずそっと名前の肩を掴んで離した。
「すみませ……」
「すき」
は?
諸伏は俯いていた顔を上げた。
「すき…警部……ずっと…すきでした」
「名字刑事」
諸伏は大真面目に言った。はい。と名前は目をきらきらさせて自分を見ている。
「……5秒、いただけますか」
「はっ?」
「いただけますか」
「え?あ、はいーー?」
諸伏は階段を三段跳びくらいでのぼり、すぐ角を曲がり壁にべたり!と背中をつけた。
「やっ……!」
やった!!やったぞ高明…!!
諸伏は思い切りガッツポーズして、しばらくバタバタして天井を仰いでくっ、と歯を食いしばる。嬉しすぎてからだが勝手に動く。
「あらここにいたの」
と上原と大和が出てきて諸伏は一気にすん、といつもの顔をした。
「断末魔が聞こえたんだよ」
「名前の声よね?どうかしたのかと…」
諸伏は咳払いして、呆然としている名前の目の前に滑り込むように戻る。
「…名前さん」
「!」
「…わたしもあなたが…ずっと……あ」
名前の手を真顔で握る諸伏に、上原と大和はきょとんとして顔を合わせた。
「…み、みかん」
「え?」
「おいしく頂きました…」
ぶっ…と吹く上原が大和の後ろで肩を震わす。今?
「へっ!」
名前は諸伏に抱きつかれびっくりしたまま立ち上がる。諸伏は笑いながら名前を抱いてぐるぐる回った。
「けーぶっ」
名前は帰り支度を終えたのか、コートを着て立っていた。
「あぁ、名前さん…」
諸伏にっこりしてすぐ名前を移動させる。
「ん?」
「所轄は変なおじさんが多いので…あ、もちろんわたしは違います…今日も可愛いですね…可愛いコートに可愛い…あぁちょっともう何かよくわからないくらい可愛いですね」
なでなで。と頭を撫でて幸せそうな諸伏に、見ていた大和がはん、と向き直った。
「変なおじさんて誰のことだよクソ野郎…」
自覚あるの?と上原はため息をついた。
「警部だけですよぉ…そんな愛でてくれるのぉ…」
諸伏急に顔をしかめる。
「当たり前です。わたし以外にこんなナデナデされないでください」
「ふふっ。今夜は同期と飲み会なので、挨拶しに来ましたっ」
「…」
諸伏壁にべたりとしてだんだん叩く。
地獄か。自分のいない間に変な虫がついたら…
「警部?」
「あ、いえ。くれぐれも飲み過ぎず、出来る限りの距離を男性とはとり、あまり笑いかけないように」
「えぇ…?」
少し見えている上原は口を押さえ続けた。
「そんなんじゃ楽しくないと思われーー」
「思われたらいいじゃないですか!あなたがホイホイ誘われなければいいとわたしは心から願っています!すみませんね!心が狭くて!年上のくせに!」
ハハハ…と上原はもう突っ伏した。
「警部ってば…大丈夫ですよ…」
名前は諸伏に飛び付いた。
「わ、わたしは警部のだもん…」
くうう…と苦しそうな顔をする諸伏に、上原は大和を手でやった。
おかしいから見て。本当に。
「そうですね…取り乱して失礼しました…それより本当に可愛いですね」
「もーっ!」
名前はにっこりされて赤くなり帽子を深くかぶり、バタバタと階段を降りた。
「気を付けるんですよ!車!自転車!あぁ言ったらキリがない!変な輩!とにかくそれがダメです!」
「わかってるよー!また明日ねー!」
ああっ…と諸伏階段の手すりに掴まる。
「急なタメ口…なんて可愛い……くっ…心許された感…最高です……」
諸伏はあっ、と胸に手をやる。
「ダメだありゃ」
大和は肩をすくめて上原に向き直った。
「ふふっ。愛しの名前ちゃんですもの。これからはたくさんたくさんナデナデできるんだから。よかったわね…って」
上原、諸伏のパソコンの下にあるたくさんの綺麗にむかれたみかんの皮に気付く。
「ちょっと!わたしのも食べた!?」
「あぁ?俺んとこもねぇぞ」
ざわざわする所轄内で、諸伏警部!と皆が諸伏を見る。
「すみませんね!独り占めしたくなったんです!悪くは思っていませんけど!」
「なに逆ギレしてるのよ!?」
「はあ…」
と諸伏座って天井を見つめる。
けーぶっ!うふふっ…
明日はそうやって、あなたが自分を覗くまで待ちましょうか。
明日はどんなあなたがいますか?
「…」
急に真顔になり、顔を隠してだんだんデスクをする諸伏に、ふたりはため息をつき合った。
コメント
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読んだよ〜第1話、めっちゃ良かった!💞 諸伏警部の「冷静な大人の男」が名前さんの前で瓦解していく感じ、たまらなく愛おしかった…。 特に「5秒ください」で階段ダッシュからのガッツポーズ、あれ完全に高校生の恋する男子じゃん!📮💥 名前さんの「ずっとすきでした」も、重くなりすぎずストレートに響いて泣けた。 みかんの皮を独り占めする諸伏警部の独占欲も、照れ隠しもぜんぶ尊い…。 続きも絶対読むね! お互いの「好き」がこれからどう育っていくのか、楽しみにしてるよ🌙